2002 Fiscal Year Annual Research Report
吸入麻酔薬の抗侵害作用におけるノシセプチン受容体の役割に関する研究
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13770829
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宮崎 嘉也 京都大学, 医学研究科, 助手 (10324625)
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Keywords | ノシセプチン受容体 / 最小肺胞濃度 / 揮発性吸入麻酔薬 / 亜酸化窒素 / tail-flick test / ストレスホルモン |
Research Abstract |
申請者は、前年度に吸入麻酔薬の最小肺胞濃度(minimum alveolar concentration : MAC)に対するノシセプチン系の関与を検討する目的で、ノシセプチン受容体ノックアウトマウスで各種吸入麻酔薬のMACを検討した。その結果、ノシセプチン受容体ノックアウトマウスの各種揮発性吸入麻酔薬(ハロセン、イソフルレン、セボフルレン)のMACは、野生型と欠損型の間で差は認められなかった。次に、吸入麻酔薬の中で最も鎮痛作用が強く、その作用は内因性オピオイドに関係していると言われている亜酸化窒素の鎮痛作用を検討するために、tail-flick testを用いて野生型と欠損型で比較した。その結果、野生型にでは潜時の延長が認められず、欠損型で延長していた。 次に、前年度に求めた1MACのハロセンを、上記のノックアウトマウスに吸入させた。平衡に達したところで、侵害刺激として腹腔内酢酸投与(内臓痛モデル)を行った後、断頭により採血を行った。また、同様にtail-flick testで用いた濃度の亜酸化窒素下でも腹腔内酢酸投与による侵害刺激を与えた後に断頭による採血を行った。現在、ストレスホルモンとして血中ノルエピネフリン、ACTH、バソプレッシンを特異的なRIAを用いて測定中である。結果として、ハロセンの場合、野生型と欠損型に有意差はなく、亜酸化窒素では野生型よりも欠損型でストレスホルモンの分泌が抑制されている事が予想させる。このことは、tail-flick testにおける結果と矛盾しないと思われる。 以上の結果は、ハロセンを代表とする揮発性麻酔薬の作用にはノシセプチンは関与しないのに対して、亜酸化窒素はその鎮痛作用の機序にノシセプチンが関与している可能性を示唆するものであると考える。
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