Research Abstract |
近年増加傾向にある卵巣明細胞腺癌はプラチナ製剤に低感受性であり,早期癌であってもその予後は不良である.本研究では,卵巣明細胞腺癌のシスプラチン(CDDP)耐性機序を明らかにすることを目的とした. 卵巣明細胞腺癌(CCC)由来細胞株11株(HAC-2,RMG-I, RMG-II, KK, KOC-7c, HCH-I, OVAS, OVISE, OVMANA, VSAYO, SMOV-2)および卵巣漿液性腺癌(SAC)由来細胞株5株(KF, KFr, KFTx, SK-OV-3, HRA)を対象とした.CDDPのIC_<50>をMTT assayで算出し,assay AUCと臨床的AUC(85.8μM・h)を比較検討した.細胞増殖能をflow cytometryにより検討するとともに,薬剤の細胞外排出ポンプであるmultidrug resistance-associated protein(MRP)-1とMRP-2遺伝子発現をRT-PCR法で検索した. SACではCDDPに対するIC_<50>は,2.2から13.0μMで5株中3株がCDDP感受性であった. MRP-I遺伝子発現はCDDPに,耐性を示すKFrならびにSK-OV-3で,MRP-2遺伝子発現はKFrで観察され,CDDP感受性とMRP遺伝子発現の関連が確認された. 一方,CCCでは,MRP-I遺伝子発現はすべての細胞株で,MRP-2遺伝子発現は11株中7株で観察された.しかしながら,CDDPに対するIC_<50>は,1.3から18μMと細胞株により大きく異なり,CDDP,感受性とMRP遺伝子発現との関連はみられず,11株中4株でのみCDDP感受性であった. 倍加時間は,CCCで平均61.4±12.4時間とSACの平均29.8±8.6時間に比して有意に長く,CCCは細胞増殖能が低いことが示唆された. 次に,S期細胞比率とCDDP感受性との関連をみてみると,CCCにおいてS期細胞比率とCDDPのIC_<50>は有意な負の相関を示した. したがって,卵巣明細胞腺癌におけるシスプラチン耐性機序には細胞増殖能の低下が関与することが示唆された.
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