胎児中枢神経機能障害の発症機序と胎内治療に関する研究

2001 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 13770925
• Research Category: Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
• Research Institution: Kochi Medical School
• Principal Investigator: 篠原 康一 高知医科大学, 医学部・附属病院, 助手 (50314993)
• Keywords: フリーラジカル / 酸化ストレス / 胎児脳障害 / ミトコンドリア / 脂質過酸化 / メラトニン / 虚血-再灌流

Research Abstract

【背景】我々はin vitro実験において、ラットの胎仔脳は低酸素ストレスには抵抗性であるが、フリーラジカル(FR)による酸化ストレスで容易に障害されることを明らかにし、胎児脳障害は、低酸素血症とは別に酸化ストレスが強く関与していることを明らかにしてきた。【目的】本研究の目的は、強力な抗酸化能を有し、SODやGSH-Pxなどscavenger酵素活性をも亢進させるといわれているメラトニンに注目して、胎児中枢神経機能障害に対する経母体的抗酸化治療薬としての可能性を検討することである。また胎児循環の中心である胎盤に注目し、そのミトコンドリア機能についても評価する。【方法】19日齢のラットを用い、子宮動脈を20分間結紮後、30分間再灌流することにより、虚血-再灌流実験モデルを作製し、虚血-再灌流群(IR)、メラトニン前投与(M)群(10mg/kgを1時間前に投与し、20分間結紮、30分再灌流)、およびコントロール(C)群としてsham ope群の3群に分別した。3群の胎仔脳および胎盤のMt分画を我々の教室で開発した方法で採取し、Mt機能活性の指標であるADP/O ratioとRCIをクラーク型酸素電極を用い測定した。脂質過酸化物としてはLPOをTBA法で測定した。【結果】(1)胎仔脳におけるMtのRCI ADP/O ratioともC群に対し、IR群では有意に低値を示したが、M群ではIR群に比較し有意に高値を示した。胎仔脳におけるMt分画のLPOはC群に比較し、R群では有意に高値を示したが、この増量はM投与により有意に低下した。(2)胎盤におけるMtのRCIもC群に対し、IR群では有意に低値を示したが、M群ではIR群に比較し有意に高値を示した。ADP/O ratioもRCIと同様の結果であった。胎盤におけるMt分画のLPOはC群に比較し、R群では有意に高値を示したが、この増量はM投与により有意に低下した。つまり子宮動静脈のIRにより胎仔脳や胎盤のMt分画の脂質過酸化が亢進し、Mt呼吸機能が障害されることが示された。一方、MはFRによる胎仔脳や胎盤Mt分画の酸化的損傷を軽減し、Mt呼吸機能障害を著しく改善することが示された。【結論】メラトニンの前投与により、胎盤や胎仔脳の酸化障害を予防できたことから、メラトニンはFRによる胎児脳障害の発症予防に対して極めて有効であることが示された。
未熟胎仔脳は成熟胎仔脳より酸化ストレスを受けやすいことより、来年度は未熟胎仔に対して同様の検討を行う予定である。

Research Products

• [Publications] Akihiko Wakatsuki: "Melatonin protects fetal rat brain against oxidative mitochondrial damage in human umbilical artery : Relation to calciuminflux"J Pineal Res. Jan;30(1). 22-28 (2001)
• [Publications] Yuji Okatani: "Melatonin stimulates glutathione peroxidase activity in human chorion"J Pineal Res. May;30(4). 199-205 (2001)
• [Publications] Akihiko wakatsuki: "Melatonin protects against ischemia/reperfusion-induced oxidative damage to mitochondria in fetal rat brain"J Pineal Res.. Sep;31(2). 167-172 (2001)
• [Publications] Yuji Okatani: "Melatonin protects against oxidative mitochondrial damage induced in rat placenta by ischemia and reperfusion"J Pineal Res. Sep;31(2). 173-178 (2001)