2001 Fiscal Year Annual Research Report
内リンパ水腫疾患発生の機序およびその制御に関する研究
Project/Area Number |
13770966
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Kochi Medical School |
Principal Investigator |
濱田 昌史 高知医科大学, 医学部・附属病院, 助手 (20325426)
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Keywords | Meniere病 / 内リンパ水腫 / モルモット / 圧治療 / 鼓膜換気チューブ / 高気圧酸素療法 / 側頭骨病理 / 中耳炎 |
Research Abstract |
Meniere病治療のための基礎となる実験的内リンパ水腫の制御を目的に以下の2実験を行った。 1.中耳圧治療:(方法)一側の内リンパ管遮断モルモットの鼓膜にポリエチレンチューブを14日間挿入留置した(N=12)。またこのチューブより21cmH20の陽圧を1時間、1日2回、14日間負荷した(N=12)。対照群として、内リンパ水腫のみ作製群(N=13)、正常耳にチューブのみ留置群(N=5)、正常耳にチューブ留置の上、陽圧負荷群(N=6)を用いた。遮断14日目に断頭し組織学的標本を作製した。内リンパ水腫への効果を見るとともに中耳・内耳への副作用についても検討した。(結果)蝸牛の有毛細胞変性所見については水腫のみ、チューブ留置、チューブ+陽圧負荷の3群間に差を認めなかった。また、内リンパ腔の体積についても3群間に有意差を認めなかった。チューブ留置群、とりわけ陽圧負荷群においては中耳炎が高度に惹起された。 2.高気圧酸素療法:(方法)22匹のモルモットで一側の内リンパ管を遮断後、高気圧チェンバー(Reimers Engineering, B-11)にて治療した。純酸素を2ATA(14.7psi)もしくは1.5ATA(7.35psi)にて1時間、1日1回、2週間に渡って加療した。内リンパ水腫のみ作製した19匹を対照とした。14日目に断頭、組織学的に水腫の変化、感覚細胞の変化を観察すると共に気圧外傷の有無を検討した。(結果)高気圧酸素を負荷した実験群と対照群では蝸牛有毛細胞およびラセン神経節細胞の変性、血管条の変化に差を認めなかった。内リンパ水腫の比較では、内リンパ腔全体では差を認めなかったが、蝸牛高回転ほど実験群では体積が減少し、第3回転では両者間に有意差を認めた。実験群では高度の中耳粘膜の肥厚および骨新生を認めた。 以上の2実験よりMeniere病の治療として欧米を中心に広く行われている圧治療を検証した。 1.中耳陽圧治療は中耳炎の副作用のみで内リンパ水腫の治療効果は認められない。 2.高気圧酸素療法は中耳炎の副作用は認めるものの、ヒトMeniere病の初期病態と考えられる蝸牛高回転の水腫抑制効果は認められた。実際の作用機序、特に酸素の持つ役割については今後の検討課題である。
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