2001 Fiscal Year Annual Research Report
内耳障害におけるアポトーシス細胞死と有毛細胞再生の研究
Project/Area Number |
13770981
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
高橋 克昌 群馬大学, 医学部, 助手 (30326839)
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Keywords | アポトーシス / カスパーゼ / 難聴 / 聴性脳幹反応 / 聴覚 / ノックアウトマウス / 内耳 / コルチ器 |
Research Abstract |
アポトーシスを生じるモデルとして、カスパーゼ3ノックアウトマウスに着目した。同マウスはアポトーシスの実行因子として重要なカスパーゼ3が機能しないために、奇形や生後早期からの水頭症などを生じる。主に中枢神経系の細胞の過剰発現で症状が現れるとされている。 同マウスの聴力を聴性脳幹反応にて測定したところ、生後早期から高度の難聴を呈していた。中枢神経系のみならず末梢聴覚系においても、カスパーゼ3のノックアウトによって、本来、胎生期に死滅すべき細胞が残存し、細胞が過剰発現していると予想された。 そこで胎生期から生後早期の同マウスの内耳の準超薄切片を作成し、組織学的に検討した。胎生期の内耳の発生は正常であったが、生後、蝸牛の成熟過程において生後9日目までに消失するはずのGreater epithelial ridge(GER)と呼ばれる部分が、生後3週間も存在した。走査電子顕微鏡でコルチ器表面を観察したところ、生後1ヶ月齢の同マウスで、内有毛細胞のさらに内側、境界細胞と呼ばれる細胞の総数が、正常マウスと比べ有意差をもって増加していた。 生後3日、6日、9日、12日齢の正常マウスのGERにおいて、抗活性型カスパーゼ3抗体による免疫組織染色、TUNEL法によるアポトーシスの検出を行った。生後6日齢でカスパーゼ3の活性化は著明となり、生後9日齢では消失した。アポトーシスを生じた細胞は生後6日目から9日目に限って認められた。すなわちGER領域のアポトーシスは非常に限られた時期(生後6日目)に急速に生じて、数日で急速に消退することが明らかになった。 カスパーゼ3ノックアウトマウスにみられた内耳の異常は、GERに胎生期に過剰発現した細胞がアポトーシスの障害により残存して生じることが明らかになった。生後の内耳の成熟過程には、カスパーゼ3の活性化と正常なアポトーシスの実行が不可欠であることが明らかとなった。
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Research Products
(1 results)