2001 Fiscal Year Annual Research Report
内耳障害におけるストレス関連遺伝子の発現とその制御機構に関する研究
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13771003
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Kitasato Institute |
Principal Investigator |
松延 毅 社団法人北里研究所, 北里研究所病院, 研究員 (00332205)
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Keywords | HIF-1α / 音響外傷 / フリーラジカル / 転写因子 / 酸化還元 / アポトーシス / 難聴 / 外有毛細胞 |
Research Abstract |
最近になり、低酸素依存的転写に必要なエレメントに結合し作用するhypoxia-inducible factor (HIF-1)が、多くの細胞および組織で働くことが明らかになってきている。一方、近年において強大音暴露による急性感音性難聴、いわゆる急性音響外傷のメカニズムとしてフリーラジカルの関与が示唆されているが、フリーラジカルなどの酸化的ストレスが聴覚路に及ぼす影響、及びそれらが聴覚路の組織を細胞傷害や細胞死に至らしめる過程等、詳細は殆ど不明である。そこでモルモットの音響外傷モデルを用いて、蝸牛の音響外傷成立のメカニズムにおけるHIF-1αの関与を検討したので報告する。 プライエル反射正常の有色モルモツトを使用し、防音室内で105dBオクターブバンドノイズ(4kHz中心)を2時間および5時間曝露した。強大音曝露後、直ちに麻酔、断頭、顕微鏡下に蝸牛感覚上皮をダイセクションした。次に試料をホモジナイズし、SDS処理し、電気泳動後、PVDF膜に転写しwesten blottingを、また、強大音5時間曝露後の蝸牛感覚上皮については免疫染色も併せて行った。 ウェスタンブロットではコントロールに比べて強大音曝露2時間後に蝸牛感覚上皮と外側壁においてHIF-1αの発現の上昇傾向が認められ、曝露5時間後には明らかな発現の増加が認められた。免疫組織化学においては強大音曝露後の蝸牛感覚上皮においては、三列の外有毛細胞において、HIF-1αの強い染色が認められた。 音響外傷により、初期には外有毛細胞に主な変性が認められることより、音響外傷の分子メカニズムへのレドックス感受性転写因子の関与が考えられる。HIF-1αは、低酸素環境に応答して発現が増加し、またその他の転写制御因子であるAP-1やNF-kappaB、Ref-1などの活性を増加させて、酸化的ストレスに応答する種々の遺伝子発現を制御していると考えられている。内耳障害におけるレドックス制御機構を解明することは急性感音難聴のメカニズムの解明および治療につながるものと考えられる。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] Shizuki K, Ogawa K, Matsunobu Kanzaki J, Ogita K: "Expression of c-Fos after noise-induced temporary threshold shift in the quinea pig cochlea"Neuroscience Letters. 320. 73-76 (2002)