2001 Fiscal Year Annual Research Report
長波長レーザの低出力、長時間照射に対する網膜の組織変化と脈絡膜新生血管治療の試み
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13771041
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
伊藤 洋子 埼玉医科大学, 医学部, 助手 (30322423)
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Keywords | 経瞳孔温熱療法(TTT) / 脈絡膜新生血管 / 長波長レーザ / 低出力照射 / 長時間照射 |
Research Abstract |
波長810nm半導体レーザの低出力、長時間照射におけるサル網膜の変化(第55回日本臨床眼科学会) 脈絡膜新生血管に対する治療法である経瞳孔温熱療法(TTT)の有用性と安全性に関する動物実験の結果を報告した。 波長810nmの半導体レーザをマカク属サル5眼の眼底に照射した。照射条件は直径2mm、照射時間60秒、総出力50、60、80mW(それぞれ96、115、153J/cm^2に相当)とした。照射直後と2週間後に眼球を摘出し、摘出直前に検眼鏡検査、フルオレセイン蛍光造影(FAG)、インドシアニングリーン(ICG)蛍光造影を行った。組織変化は光学、電子顕微鏡で観察した。 検眼鏡検査、FAG、ICG造影検査では、照射直後、2週間後ともに照射による変化はなかった。 組織学的には、照射直後には感覚網膜に核濃縮や視細胞内節の空胞化が観察され、内節の変化は錐体に多く見られた。網膜色素上皮細胞(RPE)には基底部に空胞化があった。脈絡毛細管板は開存していたが、内皮細胞の空胞化や管腔内血小板の内皮細胞への付着が見られ、すでに内皮細胞障害に伴う血管閉塞機転が開始していると推測した。脈絡膜中大血管には変化がなかった。照射2週後では、照射直後にみられた視細胞の変化はなく、すでに死滅、脱落したものと考えた。RPEには高度な空胞変性があった。3割程度ではあったが、脈絡毛細管板は閉塞しており、脈絡膜中大血管で管腔の狭細化や閉塞、内皮細胞の消失が観察された。 波長810nmの半導体レーザによるTTTは、従来の光凝固に比べ、感覚網膜への障害は軽度ではあるが無視できるものではなく、また、錐体の多く存在する中心窩ではより光度の障害が引き起こされることが推測される。さらに、効果にばらつきがあることを考え併せると、臨床応用上、色素を多く有する眼での照射条件の設定に対しては、より厳密で詳細な検討が必要であると結論された。
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