2002 Fiscal Year Annual Research Report
長波長レーザの低出力、長時間照射に対する網膜の組織変化と脈絡膜新生血管治療の試み
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13771041
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
伊藤 洋子 埼玉医科大学, 医学部, 助手 (30322423)
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Keywords | 経瞳孔温熱療法(TTT) / 脈絡膜新生血管 / 長波長レーザ / 低出力照射 / 長時間照射 / マイクロ・アレイ / サイトカイン |
Research Abstract |
長波長半導体レーザの低出力、長時間照射に対するサル網膜の変化 -波長635nmと810nmの比較 (2002年ARVOにて発表) 635nm半導体レーザをマカク属サル7眼の眼底に照射した。照射条件は、直径1mm、照射時間30-80秒、出力20、50、79.2J/cm^2とした。また、810nm半導体レーザを5眼の眼底に、直径2mm、時間60秒、出力96、115、153J/cm^2で照射した。レーザ照射直後と2週間後に眼球摘出し、摘出直前にフルオレセイン蛍光造影(FAG)、インドシアニングリーン(ICG)蛍光造影を行った。組織変化は光学、電子顕微鏡で観察した。 TTT直後の検眼鏡検査、FAG、ICG蛍光造影検査では、635nm、810nmレーザ照射による変化は観察されなかった。2週間後には、810nmレーザ照射でFAGの造影初期に脈絡膜毛細管板への流入障害が観察された。 組織変化に関しては、外顆粒層の濃縮核の出現頻度は、635nmで18%、810nmでは73%であった。2週間後には、635nm、810nmともに57%となった。空胞化した視細胞内節は、照射直後には635nm、810nmでそれぞれ73%、47%でみられた。2週間後には組織の回復がみられ43%、11%になっていた。網膜色素上皮細胞の空胞化は、照射直後で、635nm、810nmでそれぞれ62%、36%でみられたが、2週間後には、71%、65%となっていた。脈絡膜血管は両波長で照射直後に狭窄を示すものもあったが、閉塞はしていなかった。2週間後には、635nmでは25%、810nmでは28%で脈絡膜血管の閉塞が観察された。 今回の結果からは、635nm、810nmの両波長の半導体レーザの長時間、低出力照射では、25-30%で脈絡膜血管の閉塞が得られることがわかった。一方、神経網膜への障害が60-70%で出現するという結果は、TTTを施す上で無視できない事実である。また、635nmを照射した場合、内節への障害が高頻度に残存することより、635nmはTTTには不適であると考える。 TTTの作用機序 -マイクロ・アレイ TTT後の網膜における生体反応を調べるために、有色ラット12眼の眼底に810nm半導体レーザを直径2.5mm、50mWで60秒間照射した。照射直後に眼球摘出し、RNAを抽出、マイクロ・アレイにてTTTによって発現したと考えられるサイトカインを検索した。その結果、TTTによってinterleukin、fibrinogen様蛋白、TNF関連蛋白の発現があり、脈絡膜血管閉塞に関与していることが示唆された。
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