2002 Fiscal Year Annual Research Report
感染性心内膜炎原因菌の定着因子を探る-S・mutans菌体表層抗原変異株の利用-
Project/Area Number |
13771275
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
長田 恵美 鹿児島大学, 歯学部附属病院, 助手 (00304816)
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Keywords | 感染性心内膜炎 / Streptococcus mutans / 表層多糖抗原 / ラムノース / グルコース / 細胞外マトリックス / ラット |
Research Abstract |
感染性心内膜炎の主要な原因菌は連鎖球菌であり、う蝕細菌として知られているStreptococcus mutans (S.mutans)もその原因菌の一つとして注目されている。S.mutansの菌体表層多糖抗原はポリL-ラムノースの骨格とD-グルコースの側鎖からなっているが、近年この菌体表層多糖抗原が、S.mutansの病原因子として注目されている。そこでS.mutansの菌体表層多糖抗原のD-グルコースの側鎖がない変異株(S.mutans Xc 45)、ポリL-ラムノースの骨格とD-グルコースの側鎖全てがない変異株(S.mutans Xc 41)、および野生株(S.mutans Xc)を用いて、S.mutans菌体表層多糖抗原がこの菌種の心内膜損傷部への定着因子であるかどうかを、ラットにおける感染性心内膜炎発症実験、および菌体の細胞外マトリックスへの結合能にて検討した。ラットにおける感染性心内膜炎発症実験において、感染性疣贅陽性動物の割合は、野生株のS.mutans Xcで81.8%、変異株のXc 45で60.0%、Xc 41で36.4%であった。Log_<10>CFU/mg疣贅の平均値は、順に3.09、3.14、3.12であった。菌血症陽性動物の割合は、順に27.3%、0%、0%であった。S.mutans XcのLog_<10>CFU/ml血液の平均値は1.26であった。菌体の細胞外マトリックスへの結合能をみると、S.mutans Xc、Xc 45はラミニン、I型コラーゲン伴に高い結合能を示したのに対して、Xc 41は中程度の結合能であった。一方、フィブロネクチンに対してはXc41は中程度の結合能を示したのに対して、S.mutans Xc、Xc 45はきわめて微弱な結合能しか示さなかった。S.mutans菌体表層多糖抗原の有無は、菌体の細胞外マトリックスへの結合能に影響を与えることが示唆された。S.mutansの心内膜損傷部への定着因子に関してさらなる検討が必要と思われる。
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