2002 Fiscal Year Annual Research Report
マウス腹水ガン細胞由来転写伸長因子S-IIのX線結晶構造解析
Project/Area Number |
13771352
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野口 修治 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 助手 (60237823)
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Keywords | 転写伸長因子 / タンパク質化学 / X線結晶構造解析 |
Research Abstract |
結晶化のために、S-IIを陽イオン交換、疎水、ゲル濾過の各クロマトグラフィーによりSDS電気泳動で単一のバンドを示すまで精製する方法を確立した。結晶化を試みたところ、塩の共存下でポリエチレングリコールを沈殿剤として使用したときに油状沈殿に混じって球晶状の凝集物が得られたが、再現性が低かった。タンパク質試料の詳細な化学分析から、タンパク質試料中には精製の初期段階で用いられるZnイオンがタンパク質に特異的に結合している量以外にモル比で数%程度過剰に残留しており、それがタンパク質の非特異的凝集を促進している可能性が明らかになった。また、タンパク質をアルカリ性の条件下に保つとシステイン残基が酸化して多量体が形成されることと、アスパラギンの脱アミド反応が生じたタンパク質成分が最終精製試料中にモル比で数%存在していることも明らかとなった。そこで、従来のクロマトグラフィー操作をすべて弱酸性下で行い、かつタンパク質濃度を厳密に制御して硫安沈殿を行うことで、それらの夾雑物を完全に除去できる新しい精製方法を確立した。新精製方法で得られたタンパク質試料からは球晶状凝集物が再現性良く得られたが、三次元的な結晶には成長しなかった。タンパク質試料を動的光散乱法により分析したところ、溶液中では結晶化に適した単分散状態であるが、拡散係数から計算される分子量はアミノ酸配列から計算される分子量よりも40%以上大きい値を示していた。この事実はタンパク質分子の形状が球状からは大きくかけ離れたものであることを示唆している。S-II分子は三つのドメインから構成されているが、それらのドメインが特定の相対配置をとらないために三次元結晶の生成が阻害されている可能性があり、S-IIの複数のドメインと強力な相互作用をする新規タンパク質との複合体が形成できれば、複合体として結晶が得られると考えられる。
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