2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13771391
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Research Institution | Hoshi University |
Principal Investigator |
阿部 和穂 星薬科大学, 薬学部, 講師 (60202660)
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Keywords | 長期増強(LTP) / 海馬 / 扁桃体 / 記憶 / 情動 |
Research Abstract |
海馬は記憶形成に重要な脳部位である。この海馬の神経系においては、記憶の分子メカニズムと考えられる長期増強(LTP)現象が認められる。一方、扁桃体は情動を司る脳部位である。私は過去の研究において麻酔ラットを用いて、扁桃体を破壊すると海馬のLTPが減弱することを発見した。これは扁桃体が海馬LTPを制御していることを示す初めての知見であり、情動によって記憶が左右されるメカニズムを研究するよいモデルになると思われた。平成13年度の研究においては、生理的な状態での扁桃体と海馬の相互作用を理解するために、無麻酔・無拘束状態でラット海馬のシナプス電位を記録する技術を確立した。当初計画では、この技術を用いて、覚醒状態のラットに情動関連刺激(侵害刺激、音刺激、食餌、絶水など)を与えたときの扁桃体の応答と海馬LTPの変化を調べる予定であった。しかし、無麻酔・無拘束状態で安定したLTPを観察できる確率が低かったうえ、侵害刺激や音刺激などによる行動上の変化が電位記録に多大な影響を及ぼし、信頼できる定量データを得るに至らなかった。解決しなければならない技術的な問題が明らかとなった。その一方で、従来用いていた麻酔下での海馬誘発電位記録法を再び用いて、扁桃体から海馬に至る神経路について解析を進めた。扁桃体に電気刺激を与えると海馬歯状回において誘発シナプス電位が記録できた。さらに扁桃体に高頻度刺激を与えるとLTPが誘導できた。扁桃体から海馬歯状回に至る神経系が可塑性を有することが初めて示された。今後、扁桃体-海馬歯状回シナプス可塑性のメカニズムを解明することによって、情動による記憶増強の神経機構が解明できると期待された。
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