2002 Fiscal Year Annual Research Report
アミノアシルtRNA合成酵素を標的とした抗生物質に対する耐性メカニズム
Project/Area Number |
13771397
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
北畠 真 理化学研究所, タンパク質構造研究チーム, リサーチアソシエイト (10321754)
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Keywords | 抗生物質耐性 / アミノアシレーション / tRNA / 転写制御 / 放線菌 / 分子認識 |
Research Abstract |
本研究では初めに、トリプトファニルtRNA合成酵素(TrpRS)の阻害剤であるインドールマイシン(IM)に対する耐性株が、IM生産株を含む放線菌属の間に広く分布していることを示した。耐性株の一つS. coelicolor A3(2)のゲノム配列より、2つのTrpRS遺伝子を見いだした。これらのうちTrpRS1と名付けた遺伝子を発現させると大腸菌がIM耐性に転化したため、TrpRS1が放線菌のIM耐性の決定因子であると考えられた。TrpRS2は、TrpRS1と同様に大腸菌のTrpRS温度感受性株を相補するが、発現させてもIM耐性は見られなかった。これら2つのTrpRSの相違点より、TrpRS1のN末9番目に位置するリジンが耐性に関与していることが示唆された。この残基はアミノ酸認識ポケットの入り口に位置し、立体障害および静電反発力によってIMの活性部位への侵入を阻止していると考えられる。この残基を置換した変異体がIM耐性能を失うことから、この残基がTrpRS1の耐性に欠かせないことが明らかになった。また反応速度論的解析から、TrpRS1がTrpRS2の百倍以上の耐性を獲得すると同時に、活性部位の変異のために基質トリプトファンに対する認識がTrpRS2より低下していることが明らかになった。RT-PCRを用いた転写産物の解析を行うと、通常の増殖期には感受性だが活性の高いTrpRS2のmRNAが発現しており、培地にIMを加えると活性が低いが耐性のあるTrpRS1のmRNAが誘導されてくることが分かった。 以上の結果から、(1)活性部位の変異による抗生物質の排除メカニズム(2)変異による本来の基質への親和性低下(3)耐性酵素の機能低下を補助するための「スペア」酵素の存在(4)抗生物質による新たな機構の遺伝子発現制御、の四つの点について、これまでにない知見を得ることができた。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] Kitabatake M, Ali K, Demain A, Sakamoto K, Yokoyama S, Soll D.: "Indolmycin resistance of Streptomyces coelicolor A3(2) by induced expression of one of its two tryptophanyl-tRNA"Journal of the Biological Chemistry. 277(26). 23882-23887 (2002)