2002 Fiscal Year Annual Research Report
アミロイド前駆体蛋白質糖鎖変化の老人斑形成における意義
Project/Area Number |
13771406
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Gerontology |
Principal Investigator |
萬谷 博 (財)東京都高齢者研究・福祉振興財団, 東京都老人総合研究所・糖蛋白質研究グループ, 研究員 (20321870)
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Keywords | アルツハイマー病 / 家族性アルツハイマー病 / アミロイド前駆体蛋白質 / アミロイドβ / アスパラギン結合型糖鎖 |
Research Abstract |
糖蛋白質上の糖鎖は蛋白質の物性や相互作用に影響し、分解酵素等に対する感受性を変化させることが知られることから、アルツハイマー病(AD)においてもアミロイド前駆体蛋白質(APP)の糖鎖変化がAPP異常代謝の要因となる可能性が考えられる。そこで、APP代謝異常への糖鎖の関与について検討した。まず、家族性ADに見られるアミノ酸変異によりAPPの糖鎖が変化するか調べるため、正常型(Wt)と2種類の変異型APP695[ロンドン型(DF):Val642Phe、スウェーデン型(DNL):Lys595Asn/Met596Leu]を神経由来培養細胞で発現し、各APPのN-結合型糖鎖を分析した。その結果、正常型に比較して変異型ではbisecting GlcNAc型糖鎖が約8倍、Fucose型糖鎖が約2〜3倍も多いことが明らかとなった。この糖鎖変化は2つの変異型に共通していることから、bisecting GlcNAcとFucoseの増加がAβの産生増加に関与する可能性が示唆された。また、弧発性ADにおいてもAPPの糖鎖変化によりAPPの代謝異常が誘導されている可能性が考えられる。そこで、糖転移酵素の発現を細胞レベルで制御し特定の糖鎖を持つAPPを発現させるような、糖鎖リモデリングの実験系を作成し、bisecting GlcNAcやFucose付加のAPP代謝への影響を検討することを試みた。bisecting GIcNAcの生合成に関わる酵素、mannosyl(β-1,4)-glycoprotein β-1,4-N-acetylglucosaminy ltransferase III(GnT-III)遺伝子を神経由来培養細胞に導入し、恒常的にGnT-IIIを発現する細胞を作成した。この細胞のGnT-III活性は遺伝子導入前の約300倍に上昇した。また、bisecting GlcNAcを認識するレクチン(E-PHA)により、bisecting GlcNAc型糖鎖が高頻度に発現することを確認した。現在、この細胞を用いてAPPの糖鎖変化とAβ産生との関係を解析している。
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