2002 Fiscal Year Annual Research Report
上流に近接した遺伝子による筋型CPTI遺伝子の発現調節機構の解明と心筋症治療薬
Project/Area Number |
13771413
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
山崎 尚志 徳島大学, 薬学部, 助手 (20271083)
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Keywords | カルニチン / CPTI / ミトコンドリア / 脂肪酸β酸化 / 遺伝子構造 |
Research Abstract |
カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼI(CPTI)はミトコンドリアにおける長鎖脂肪酸のβ酸化に必須の酵素で、組織分布の異なるアイソフォームが存在する.研究代表者はこれまでに、心筋や脂肪細胞で特徴的に発現している筋型CPTIをコードするcDNAや遺伝子を世界に先駆けて単離しその構造解析を行ってきた.その結果、筋型CPTI遺伝子のすぐ上流には、機能的には全く関連しないCK/EKというタンパク質の遺伝子が同じ転写の方向で存在すること、さらにヒトにおいてCK/EKと筋型CPTIの2つの遺伝子領域を含んだポリシストロン様のmRNAが存在することを明らかとした. 本研究では、上述したポリシストロン様のmRNAの構造や機能の詳細を明らかとする目的で、まずラットやマウスにおいてもこのようなmRNAが存在するかどうかRT-PCR法によって解析を行った.その結果、ラットやマウスにおいてもヒトと同様にCK/EKと筋型CPTIの領域を含んだmRNAが存在することが明らかとなったものの、その量はヒトの場合と比較してごく僅かであることが示された.さらにノザン・ブロッティングの結果から、このポリシストロン様mRNAの量は、筋型CPTI遺伝子の上流に存在するCK/EK遺伝子のmRNA量とは比例していないことが示された. 以上の結果から、このポリシストロン様mRNAはCK/EK遺伝子の転写開始部位から合成されているが、ラットやマウスではCK/EK領域で転写終結が起こりやすいために筋型CPTI遺伝子とのポリシストロン様のmRNAが生じにくい可能性、あるいはこのmRNAはCK/EK遺伝子内に存在する、ヒトで強い活性を有した未知のプロモーターから転写されたmRNAである可能性が考えられた.CK/EKと筋型CPTIの領域を含んだポリシストロン様mRNAの生理的な役割は全く不明であるので、今後、このmRNAがどのような機構で合成されているのか、生体内でどのような役割を担っているのかをさらに解析を行っていく.
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[Publications] Y.Shinohara et al.: "Expression of NAD+-dependent isocitrate dehydrogenase in brown adipose tissue"Biochem. Biophys. Res. Commun.. 281. 634-638 (2001)
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[Publications] N.Yamazaki et al.: "Structural properties of mammalian mitochondrial ADP/ATP carriers"Mitochondrion. 1. 371-379 (2002)
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[Publications] N.Yamazaki et al.: "The gene encodingmuscle-type carnitine palmitoyltransferase I : comparison of the 5'-upstream region of human and rodent genes"J. Biochemistry. (in press).