2002 Fiscal Year Annual Research Report
マネージドケアに対する我が国の患者、医療従事者の意識に関する調査研究
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13771431
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
宮川 路子 法政大学, 人間環境学部, 助教授 (30276216)
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Keywords | 国民医療費 / マネージドケア / 自己負担割合 / 医療内容審査 / 受診制限 / 定額払い方式 / 出来高払い方式 / 国民皆保険制度 |
Research Abstract |
国内の大学生約500名、大学病院受診患者約800名、大学病院勤務医約150名、医学部生100名を対象にマネージドケアと日本の医療政策に関するアンケート調査を行った。回答者の殆どが日本の急速な高齢化を認識し、国民医療費の高騰についての問題意識を持っていた。一般大学生と大学病院受診患者、医学部生、医師で回答に違なる傾向が認められた。マネージドケアの手法について、まず自己負担割合を高くすることについては、学生・患者は高くすべきでないという意見が大半であったが、逆に医師・医学生では高くするべきだと考える人が半数を占めた。医療内容審査については、学生・患者・医学生は行うべきでだとする者が過半数を占めていたが、医師では否定的な意見の者が多かった。医師は、事故の診療内容の監視には抵抗感を覚えるが、医療費抑制対策としては効果があると考えている者が多かった。疾患ごとの医療費定額支払い制度の導入については、学生・患者では、あまり質問の意味がよく理解されなかったようであった。医学部生では、実施されるべきだと回答した者が過半数であったが、逆に医師では、全員が実施されるべきではないと回答した。医療提供側の立場としては、従来通りの出来高払い制度による収入の確保、または、治療を制限されることのない最高の医療の提供が重要であると考えられる。また、この定額払い制度の導入による医療費抑制効果については、医師ではほとんどが効果なしと回答した。医療への競争原理の導入については、患者で7割、医学生・医師で過半数が医療費抑制効果ありと回答しており、今後の対策として、競争原理の導入もやむをえないと考えていることがわかった。医療費抑制策として患者が抵抗感を覚えるものは、自己負担割合の導入と医療機関へのアクセス制限であった。今後の改革では、国民皆保険制度によって成し遂げられた医療の質を低下させることなく、効率的な医療費の削減を達成できるような対策が望まれる。マネージドケアが広く普及した米国でも、患者の医療機関受診、専門医受診の権利の保護が強く求められており、我が国においてマネージドケアの手法を導入するにあたり、「患者の権利の保護」が必要であることを強く示唆する結果となった。
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