2002 Fiscal Year Annual Research Report
中枢神経系疾患による血液脳関門の機能変化と制御機構の解明
Project/Area Number |
13771439
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Research Institution | Toyama Medical and Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
川上 純一 富山医科薬科大学, 附属病院, 助教授 (50272539)
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Keywords | 血液脳関門 / 脳毛細血管内皮細胞 / アストロサイト / 共培養 / 炎症性サイトカイン / 多発性硬化症 / 実験的自己免疫性脳脊髄炎ラット / 酸化ストレス |
Research Abstract |
多発性硬化症(MS)などの中枢神経系の炎症性疾患の患者においては、血液脳関門(BBB)の機能性が破綻していることが報告されている。また脳脊髄液(CSF)中の炎症性サイトカインTNFαやIL-1βが高値を示すと報告されているが、BBBバリアー能の低下との関係は解明されていない。本研究では、脳毛細血管内皮細胞とアストロサイトによるin vitro BBBモデルを用いて炎症性サイトカインによるBBBの破綻とそのメカニズムについて検討した。またin vivoにおいて、MSモデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)ラットを用いて、炎症性サイトカインと脳組織への物質透過性及び麻痺症状との関係を検討した。 In vitro BBBモデルにおいて、tight性の指標であるTEER値はTNFαとIL-1βの併用添加により大きく低下した。この反応はNF-kBとiNOSの阻害剤によりそれぞれ抑制され、またラジカル捕捉剤MCI-186により完全に阻害された。メディウム中のNO濃度は、TNFαとIL-1βの併用添加24時間後に著しく上昇しており、各阻害剤とMCI-186により低下した。In vivoではEAEラットにおいて、麻痺症状のピークにおけるCSF中TNFαとIL-1β濃度は有意に上昇した。フルオレセイン静注後の脳組織内移行性とCSF/血清タンパク量比が有意に上昇していた。MCI-186によりCSF中TNFαとIL-1β濃度及びタンパク量比は低下し、麻痺症状もDexamethasone治療と同程度に回復した。 以上より、炎症性サイトカインによるBBB破綻にはNF-kBの活性化とiNOSの誘導に基づく酸化ストレスが関与しており、ラジカル捕捉剤によるBBBバリアー能の修復はMS治療法の一つとなり可能性が示唆された。
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