Research Abstract |
研究目的:在宅高齢者のうち厚生省障害老人の日常生活自立度判定(以下,自立度)Jランクの死別者と有配偶者の閉じこもりの実態とその特性について検討し,施策化に向けての基礎資料とすることである。 研究方法:調査対象は昨年度と同様である。分析対象も昨年度同様,死別者群189名(閉じこもり状況:risk群39.7%,non-risk群60.3%),有配偶者群132名(閉じこもり状況:risk群43.9%,non-risk群56,1%)とする。分析は,死別者群,有配偶者群の各々について,年齢,性別,老研式活動能力指標総得点,主観的健康感,友人との交流頻度,配偶者の健康状態(有配偶者群のみ)を調整し,多重ロジスティック回帰分析を行い,閉じこもりに影響を及ぼす要因について検討した。 結果:閉じこもりに影響を及ぼす要因として,死別者群では老研式活動能力指標総得点,主観的健康感で有意な差が,友人との交流で傾向が認められた。有配偶者群では配偶者の健康状態,老研式活動能力指標総得点,友人との交流で有意な差が認められた。 考察:身体・心理・社会的な機能低下が閉じこもりの状況に影響を及ぼしていることが明らかになった。自立度Jランクの在宅高齢者の活動能力をできる限り長期間維持し,自立した生活を営めるように予防的支援を行うことが必要である。対象の5割が主な移動手段が徒歩であり,高齢者のQOLに関連し最も重要な身体機能が歩行機能とされることから,徒歩で移動可能な日常生活圏内における定期的・継続的な支援が効果的である。さらに,有配偶者では,本人だけでなく配偶者の健康状況を考慮し,夫婦を1単位とした支援が重要だと考える。高齢者のニーズにあった支援を行うため,高齢者を身体・心理・社会的側面の他,環境的な側面からも多角的に検討し,ヘルスプロモーションの観点からのコミュニティづくりが,将来の寝たきり・痴呆予備群としての閉じこもりを予防する上で極めて重要であることが示唆された。
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