2002 Fiscal Year Annual Research Report
高齢者の記憶トレーニング・プログラム-豊かで生き生きとした生活に必要な記憶力の維持と増進-
Project/Area Number |
13771540
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Research Institution | Health Sciences University of Hokkaido |
Principal Investigator |
井出 訓 北海道医療大学, 看護福祉学部・看護学科, 助教授 (10305922)
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Keywords | メタ記憶 / 物忘れ / 記憶力の維持と増進 / 高齢者 / 抑うつ感 / トレーニング・プログラム / 記憶認知 / 予防教室 |
Research Abstract |
本研究は、高齢者が豊かで生き生きとした生活を送るために必要とされる記憶力の維持と増進とに焦点を当て、高齢者の記憶認知に関する基礎的な知識の蓄積と、それに基づくトレーニングプログラムの提供を目的として平成11年度より進められてきている研究である。平成14年度においては、今までの知識基盤をベースとした記憶のトレーニングプログラムを立ち上げ、北海道医療大学の生涯学習教育事業をベースとした「物忘れ予防教室」という形でのプログラム提供を試みた。このプログラムは、直接的な記憶力の向上を目指したものではなく、参加者が講義や演習形式のプログラムに参加することで老化と記憶に関する正しい知識を身につけ、そのうえで日々の生活で活用が可能となるいくつかの記憶補助方法を学び、自らの記憶に対する理解と自信とを見につけていくことを目的としていた。そこから得られる記憶に対する自己効力感が、実際の記憶力を維持し増進していくために重要であると考えたためである。プログラムの対象は札幌市を中心とした近郊地域に在住の高齢者ではあるが、今年度は特に年齢の制限は行わず、物忘れに関心があれば、いわゆる高齢予備群と考えられる40代後半から60代前半の方々をも対象として取り込んだ。プログラムは全5回のクラスを1クールとし、記憶の働きについて、老化に伴う記憶の変化について、また記憶に影響を与える要因についての講義を中心としたプログラムと、演習形式による記憶力向上のテクニックに関するプログラムから構成された。今年度は10月から4クールを実施し、63名の参加者が得られた。プログラムの提供前後で参加者全員に質問紙を配り、メタ記憶、健康状態、抑うつ感、記憶に対する効力感等の調査を行った。その結果、参加者が「物忘れ予防教室」を通じて自らの記憶に対する認識をポジティブに変換していることが明らかとなり、また日常の生活における記憶の補助方法の利用も、介入後に非常に高くなっていることが示された。このことは、「物忘れ予防教室」が高齢者にとってインフォーマティブな介入であり、こうした高齢者の記憶に対する働きかけが、高齢者自身の記憶に対する認識にプラスに働くことが示された結果であると考える。今後は参加者の数を増やすと共に、こうした高齢者の記憶に対する働きかけの拠点を増やすと共に、痴呆などの障害を持つ高儒者の記憶に対するプログラムの構築を行っていく計画である。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Ide, S., McDougall, G., Wykle, M.: "Memory awareness among Japanese nursing facility residents"International Journal of Geriatric Psychiatry. 14. 601-609 (1999)
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[Publications] Ide, S., McDougall, G.: "Influences of cognitive status, depression, and health on the use of memory strategies among residents of Japanese geriatric nursing facilities"Nursing and Health Sciences. 2. 143-151 (2000)
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[Publications] 井出訓, 森伸幸: "老人保健施設入所者とデイケア利用者に見られるメタ記憶と抑うつ感の関係と特徴"日本老年看護学会誌. 16. 19-29 (2001)