Research Abstract |
超音波法を用いて咬筋の弛緩時および緊張時の形態。および第一大臼歯上にかかる咬合力の測定を行い,咬筋の構造およびその機能の関係について検討することを目的とし本研究を実施した。 被検者は成人男性87名であった。咬筋の形態測定項目は,眼点と下顎角彎曲頂点とを結ぶ直線を咬筋長と定義し,咬筋長の眼点から遠位75%の位置を測定部位とし超音波法により左右咬筋像を撮影した。また,咬合力は,第一大臼歯上で咬合力測定器により最大咬合力を測定した。 弛緩時の咬筋形態は,右側で筋横断面積3.2±0.7cm^2,筋厚9.3±1.5mm,筋幅48.7±4.7mm。左側では,筋横断面積3.2±0.8cm^2,筋厚9.8±2.1mm,筋幅46.9±4.6mmであった。緊張時では,右側で筋横断面積3.6±0.8cm^2,筋厚11.8±1.7mm,筋幅44.7±5.0m。左側では,筋横断面積3.7±0.9cm^2,筋厚12.1±2.5mm,筋幅42.9±4.4mmであった。弛緩時と緊張時を比較した結果,左右ともに,筋横断面積と筋厚で緊張時が弛緩時に比して有意に高い値を示した(P<0.01)。しかし,筋幅は,緊張時が弛緩時に比して有意に低い値を示した(P<0.01)。 咬合力測定値は右側で683.7±204.9N,左側で693.6±208.7Nの値を得た。左右のそれぞれの値を比較すると有意な差はみられず,左右ほぼ等しい咬合力を発揮していることが示された。咬合力と咬筋形態との関連性を検討するため,咬合力と咬筋長ならびに咬筋形態の各測定項目との間の相関を左右ならびに弛緩時,緊張時別に求めたところ,すべての項目において有意な正の相関がみられた(P<0.05,P<0.01)。なかでも,筋体積および筋横断面積においては、左右ならびに弛緩時,緊張時ともに強い正の相関がみられた。 以上のことから,咬筋形態と咬合力との間には強い相関がみられ,筋横断面積,とくに緊張時の値を測定することで,発揮可能な咬合力の推定の可能性が示唆された。
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