2002 Fiscal Year Annual Research Report
咬筋の筋断面積および筋放電活動と身体運動機能との関連性
Project/Area Number |
13780030
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Research Institution | Yamaguchi Prefectural University |
Principal Investigator |
眞竹 昭宏 山口県立大学, 看護学部, 助教授 (70238921)
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Keywords | 咬合力 / 咬筋 / 筋横断面積 / 咀嚼筋 / 筋形態 / 筋力 / 日本人成人 / 超音波法 |
Research Abstract |
咬筋が咬合力を発揮する緊張時の形態的変化として,筋厚,筋横断面積が増加し,筋幅が減少するといった形態的変化がみられた。咬筋の筋横断面積に関しては先行研究の結果と比較すると明らかにこれらは小さい。これは咬筋の測定部位と筋走行に対するプローブの接触角度の違いによって生じた差と考えられる。本研究では横断面撮影時のプローブの接触角度は,可能な限り咬筋の筋走行に対して垂直になるように設定した。先行研究の多くは,咬筋の撮影位置をフランクフルト水平面を基準として設定しているため,咬筋の筋走行に対して垂直より斜度のある状態で測定されている。従って,その状態で計測された横断面積は,本研究のような測定条件での値に比較して大きくなるものと考えられた。 咬合力では,その標準偏差に示されるように個人差が大きいことがうかがえた。同様の傾向が,咬合力を測定している先行研究でもみられる。咬筋の筋力が発揮されるメカニズムは,上下顎歯の咬合面に加わる圧力が歯根膜に歪みを生じさせ,それが歯根膜に配置されている感覚神経の末端である圧受容器によって感知され,大脳皮質にある知覚中枢に情報が伝達される。そして,その情報に基づき運動中枢へ情報が伝達され適切な筋力が発揮される。さらに,歯根膜に異常を告げる情報がある場合は知覚中枢はその異常を感知し,運動中枢に発揮される筋力を抑制する情報を伝達するといった生理的抑制機能も備えている。従って,このような抑制的なフィードバックメカニズムの個人差が,咬合力で個人差が生じる一つの要因となっているものと推察される。 咬合力の発現には咬筋形態の大きさが影響しているという結果が得られた。なかでも筋横断面積との相関が最も強く,筋横断面積が大きいほど強い咬合力を発揮することがわかった。 弛緩時の咬筋単位横断面積当たりの筋力として,右側で216.0±58.5N/cm^2,左側で219.7±67.4cm^2という値が得られた。下顎を引き上げる閉口運動には,咬筋だけではなく内側翼突筋も関わっている。Hsu et al.は,咬筋と内側翼突筋の筋横断面積をMRIで求め,その面積比は2:1であると報告している。この比率から咬筋のみの筋単位横断面積当たりの筋力を求めると,右側で144.0N/cm^2,左側で146.4N/cm^2となる。以上のことから,今回得られた筋単位横断面積当たりの筋力は,他の骨格筋の筋力と比べて大きいことが認められた。これは咬筋が多羽状筋であることに加え,その筋繊維と腱の層が交互に折り重なった形状を有しているため,筋繊維の数は増加し筋の機能的横断面積が増加するという形態的特徴が原因でこのような結果になったと推察された。
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Research Products
(1 results)