Research Abstract |
本年度は,南部アフリカの昆虫食に関する文献調査と既存の資料のデータベース化と分析および現地調査を行った。 1.文献ならぴに既存資料分析 南部アフリカ地域における昆虫利用は,食用,薬用,生活用具,遊び,という物質生活的側面と,歌の題材,言い伝え,など精神生活の側面とに分けられ,各側面での用いられ方を民族昆虫学的側面と地域差・民族差について文化地理学的見地から整理した。 2.現地調査 昆虫出現時期の雨季,1月27日から2月23日まで,ナミビア,ボツワナ,ザンビア,ジンバブエ,南アフリカの各地において,集落や市場にて観察・聞き取り調査を実施した。バッタ,甲虫,カメムシ,セミ,シロアリ,羽アリ,ガ幼虫,などさまざまな昆虫の利用の実際が明らかになった。なかでもガの幼虫(イモムシ)が市場産品として重要であり,その種類と産地・消費地,国際間での流通の広がりとネットワークは,この地の昆虫資源利用の特徴を示すものとして重要であることがわかった。 これらの地域では,イモムシを含め,ほとんどの昆虫は一度乾燥される。これは,保存や流通という機能的な理由よりも乾燥食品を好むことに起因するとも考えられる。自給的な採集・食用においても乾燥させることが不可欠である。市場では魚や植物性食品など乾燥ものが多く,また昆虫もこうした乾燥食品の部門で扱われている。こうした特徴は,昆虫食の盛んな東南アジアにおいては生あるいは調理品が主体で売られているが,それと対照的であり,「乾燥」食品と昆虫食との関連は今後の比較研究を行う上で重要な示唆を与えてくれる。
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