Research Abstract |
今年度の実績は,以下の通りである. 第1に,わが国における機械工業地域に関する地理学的研究の動向を整理し,課題を明らかにした.グローバル化との関連で地方工業地域を捉える必要性,最近の再集積傾向をもたらすメカニズムの解明,空間スケールへの配慮などを課題として指摘した. 第2に,三重県を対象にして,企業におけるグローバリゼーションの進展過程を検討した.その結果,当地域における製造業企業の海外進出は,ほぼアジア諸国に限られており,労働費の節約を狙ったものが多いことが判明した.海外進出に伴う北勢地域の工場への影響については,金型などの基盤的業種や,電子部品などの労働集約的業種で生産や雇用の減少が認められ,空洞化が進みつつあることが分かった. 第3に,三重県内に立地するエレクトロニクス企業A社を対象として,グローバル化に伴う事業所配置の変化と地元関連企業群への影響について聞き取りを行った.A社は国内の液晶業界では技術面で先行し,市場シェアも高い企業で,三重県内に大規模な液晶の開発・生産拠点を有する.同社の場合,海外に生産拠点を設けているが,国内のマザー工場である三重県内の拠点への投資も重点的になされており,空洞化の兆候はない.開発部門の強化に伴い,関西地区の既存生産拠点とのリンケージが重視されている.一方,地元企業との関係では,種々の条件に応じて,取引が拡大する場合と縮小する場合があった. 第4に,グローバリゼーションに伴う工業地域の再編成に対する政策的対応について,三重県庁,四日市市などの取り組みを検討した.また,他地域との比較のため,新しい機械工業集積地である岩手県北上・花巻地域の現状と政策的対応について調査を行った. 第5に,上記の分析をふまえて,機械工業のグローバリゼーションに伴う地域的インパクトと政策的示唆を考察した.
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