2002 Fiscal Year Annual Research Report
戦後国土開発の日韓比較-折衷型開発パラダイムと過疎地域の形成過程に注目しつつ-
Project/Area Number |
13780058
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
金 どぅ哲 岡山大学, 大学院・自然科学研究科, 助教授 (10281974)
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Keywords | 国土開発 / 折衷型開発パラダイム / 過疎地域 / 国際情報交換 / 日本:韓国 |
Research Abstract |
本研究は日本と韓国における国土開発の類似性と異なる結果に着目し、(1)両国の戦後国土開発を開発パラダイムの観点から比較・検討し、類似点と相違点を明らかにするとともに、(2)「折衷型開発パラダイム」への転換後の結果の違いを、実行計画への反映と実際の財政配分および地方行政の役割といった3つの側面から比較・検討し、「折衷型開発パラダイム」の可能性と限界を明らかにするものである。 以上のような研究目的を鑑み、今年度は昨年度の成果を踏まえ、国土開発の成果の比較分析を行った。すなわち、(1)地域別の建設受注額と種類や地域内生産と家計消費の経年変化等を分析し、国土開発計画の成果を定量的に把握した。(2)地方行政の裁量権の拡大など非定量的な側面を評価するため、地方行政に権限が委ねられる地方交付税の経年変化を分析した。(3)国土開発計画の策定に関わる専門家に対する深層インタビューを行い、国土開発計画における技術的な側面とイデオロギー的な側面を突き止め、計画と実行そして結果との乖離の原因を比較分析した。(4)過疎対策関連の財政投資の経年変化を比較分析し、過疎地域の形成・維持と国土開発との関連について検討した。 以上の分析から、次のような成果が得られた。すなわち、(1)韓国における国土開発は、1990年代の第3次国土総合開発計画以降「地方分散型開発戦略」を標榜しているが、地域別の建設受注量は依然として京釜軸(ソウルと釜山をつなぐ地域軸)及び東南臨海地域に集中している。しかし、1990年代後半以降全羅南道および江原道にも地方中心都市を中心に局地的に建設受注量を伸ばしていることは注目に値する。一方、家計消費の推移は1990年代後半の金融危機の時期を除けば、飛躍的に増加している。(2)自治体の歳入に占める地方交付税の比重は全般的に増加しているものの、基礎自治団体である「郡」の管轄区域が広範に及ぶため、ミクロレベルでの地方交付税による財の配分にはいまなお課題が残る。(3)しかしながら、全般的な傾向としては韓国の国土開発も1990年代以降日本と同様に「折衷型開発パラダイム」にシフトしていると言える。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 金 どぅ哲: "韓国過疎山村における内生的住民組織の存立基盤"石原 潤(編)『農村空間の研究』、大明堂. (印刷中). (2003)
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[Publications] Doo-Chul KlM: "Mismatching Labor lnformation in Rural Industrialization of South Korea"Gerhard Gustafsson(eds.)Communication and Regional Developement, University of Karlstad. (印刷中). (2003)
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[Publications] 丁 致榮・金 どぅ哲: "山地における農耕地保全対策の模索"大韓地理学会誌. 37-2. 143-160 (2002)