2001 Fiscal Year Annual Research Report
アフリカ・ウッドランド帯における焼畑農耕民の環境認識と移動論理に関する研究
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13780062
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
大山 修一 東京都立大学, 理学研究科, 助手 (00322347)
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Keywords | 焼畑農耕民 / 移動耕作 / アフリカ / ザンビア / ベンバ / カオンデ / 持続性 / 森林破壊 |
Research Abstract |
現在においても、アフリカのウッドランド帯には民族文化、および地域の自然環境と強く結びついた焼畑農耕が数多く展開されている。人びとは民族特有の焼畑を開墾しており、開墾適地を求めて親族集団を単位に移動しつづけている。焼畑を中心とするアフリカ在来農法の特質のひとつとして、過剰な生産を指向せず杜会内部での平準化を基本とする生産様式であることが指摘されてきた。このような「粗放」な生産様式は、一定の条件下では、少ない労働投入で必要な収量を確保できる効率的な農業であることが明らかにされてきている。人びとが食糧を自給し、社会集団を編成するうえでも在来農法が重要であるにもかかわらず、外部杜会からの焼畑に対する評価はきわめて低い。 本研究では、焼畑農耕の現状と焼畑農耕民の暮らしぶりに対する理解を深めるために、人びとの生活の実態に着目し、焼畑農耕民の環境認識と居住地を移動させていく論理の解明をめざす。調査のおもな対象は、ザンビア北西部に居住するカオンデと北部に居住するベンバという、ふたつの焼畑農耕民である。カオンデとベンバは、ともにコンゴ共和国(旧ザイール)の南部に成立していたルバ王国を祖とする伝承をもつが、両民族が保有する焼畑農耕のシステムや居住様式、チーフ制度、親族関係は大きく異なっている。民族の歴史的な移動と、集団間の共生あるいは支配・従属関係、親族クラン間を結びつける冗談関係、そしてミオンボ林帯という環境のもとで展開してきた焼畑農耕に注目し、強大な王国を形成していたルバ王国を祖とする民族の形成と動態の解明につなげることに努めてきた。 本年度は、焼畑農耕民の環境認識や樹木の伐採方法、作物の生産体系に着目し、データの収集と生理をしてきた。両民族はヤメ科ジャケツイバラ亜科のBrachystegia, Julbernardia, Isoberliniaの三属が優占するミオンボ林帯に居住しているが、焼畑の伐採適地をみなすミオンボ林は異なる。ベンバは、ミオンボ林の高木層のバイオマスに着目し、haあたり90トン以上の森林を伐開しようとするのに対して、カオンデは樹木よりも、草本の種類とバイオマスを指標としている。このような差異が生じる背景、とくに土壌の肥沃度や主要作物の特質、開墾形態との関連性については、次年度の課題としたい。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] Oyama, S.: "Settlement and Agricultural Practices of Bemba shifting cultivators in Northern Zambia from Multi-temporal LANDSAT TM images"Journao of Forest Planning. 6(2). 65-74 (2001)
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[Publications] Oyama, S, Takamur, Y.T.: "Agrarian changes and Coping Strategies for Subsistence of Bemba Shifting Cultivators in Northern Zambia in the mid-1990's."Jap. Journal of Tropical Agriculture. 45(2). 84-97 (2001)
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[Publications] 大山 修一: "ザンビア北部ミオンボ林帯に居住するベンバの樹木伐採と開墾様式"熱帯農業. 45(別1). 117-118 (2001)
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[Publications] Kakeya, M., Sugiyama, Y., Oyama, S.: "The Citemene system, social Leveling mechanisms, and Agricultural Changes in a Rural Area of Northern Zambia-an Overview of 15 years of Research in the Bemba Villages"International Conference-Area Studies : Past Experiences and Future Visions. 1-9 (2001)
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[Publications] 大山 修一: "2000年度熱帯生態学会奨励賞『吉良賞』受賞記念講演 アフリカ乾燥疎開林帯の伝統的農耕システムにおける環境認識と利用"第11回熱帯生態学会年次大会講演要旨集. 11. 22 (2001)
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[Publications] 大山 修一: "ニジェール共和国中南部に居住する農耕民ハウサの農牧複合とその変遷に関する予備調査"日本地理学会2002年度秋季学術大会 発表要旨集. 60. 144 (2001)
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[Publications] 大山 修一: "構造調整製作の浸透に伴う焼畑農耕社会の変容-ザンピア北部ベンバ社会の事例より 『アフリカ農耕民の世界(掛谷誠 編著)』"京都大学学術出版会(印刷中).