Research Abstract |
今年度は,日本語学習者への調査を行うための準備として,調査票作成及び調査実施のための打ち合わせと,対象とする日本語学習者の母語に関する資料収集を中心に行った。 本調査を実施する前段階として,国内にいる外国人留学生等に対して予備調査を行い,現在その資料を分析中である。韓国人学習者に対して行った発音読み上げ調査の結果を一例として取り上げる。従来,韓国人学習者が難しいとされてきた音声を含む短文を作成し,それを日本語能力レベルを異にする学習者数名に読み上げてもらい,カセットテープに録音した。例:「おべんとうのおかずをフライパンでつりました」(ここでは,「べ」「と」「た」(閉鎖音),「ず」(ザ行子音),「フ」の子音と「パ」の母音(外来語の影響),「つ」(無声破擦音)の音声が調査対象となる。)その音声を観察,記録し,日本語音声としての適正さという観点から判断し,各音声についての不適格さを習得め難易度とし,順序付けを行った。その結果,例えば,ザ行子音/z/は,学習者の母語である韓国語に音素として存在しないため学習者に共通して難易度が高く,拗音化の傾向があると言われているが、上級学習者ではかなり問題が解消されていることが分かった。 本研究は,韓国,中国,英語,ブラジル・ポルトガル語など,母語を異にする日本語学習者に見られる日本語の発音とプロソディの特徴を記述し,対照言語学的アプローチから分析するものであるが,近年,学習者音声に見られる母語の影響を対照言語学的見地から検討するとともに,学習者の母語に関係なく見られる音声的特徴,すなわち「中間音声(interlanguage)」の研究へとシフトしている。こうした研究の背景の変化に対応できるよう,分析の際の方法論的問題について現在検討中である。
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