Research Abstract |
SSL/TLSの規格では,データを暗号化する際に,前処理としてデータ圧縮を行うと規定しているが,無圧縮以外の圧縮方式が規定されていない.しかし,比較的低速な回線を利用するユーザにとって,圧縮処理は有効である.特に,SSL/TLSが利用されるデータの形式に特化した圧縮アルゴリズムを開発することで,更なる効率化が期待される. そこで,研究期間での初年度では,この圧縮アルゴリズムを開発するための予備実験を行った.この実験の目的は2つあった.1つは,SSL/TLSにおいて既存の圧縮方式を用いるとどの程度平均ファイル転送時間が改善するかを確認すること.もう1つは,HTTP層で利用出来る圧縮機能(以下,HTTP圧縮)と比較して,どの程度性能差が見られるかを確認することであった.その結果,HTTP圧縮方式とSSL/TLS圧縮方式による平均伝送時間の大きな差異は見られなかった.また,両方式共に,HTML文書に関しては,データ圧縮による平均ファイル転送時間が低下し,特に,低速回線では圧縮によりファイルの平均伝送時間が20%程度に低減されたことが分かった. 次年度は,転送効率を更に改善するため,アプリケーションプロトコルに特化した圧縮アルゴリズムの実現方法を提案した.そして,HTTPとHTMLを対象に,圧縮プログラムを実装した.このプログラムでは,HTTPのヘッダ部と,HTMLのタグを効率的に圧縮するための静的辞書を有している.そして,日本語を含むHTML文書の転送実験により,本実装プログラムに汎用圧縮アルゴリズムを加えて用いた場合,汎用圧縮アルゴリズムのみを用いる場合よりも約3%の圧縮率の向上が見られた.また,この結果より,本方式はHTTPのみではなく,他のアプリケーションプロトコル,例えば,HTML文書を送信する電子メール配信プロトコルなどに対しても有効であるという知見が得られた.
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