2001 Fiscal Year Annual Research Report
沿岸海洋生態系における窒素循環研究のための分子トレーサー法の開発と検討
Project/Area Number |
13780413
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮島 利宏 東京大学, 海洋研究所, 助手 (20311631)
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Keywords | 窒素代謝 / 物質循環 / 海洋 / 堆積物 / バクテリア / 底生藻類 / トレーサー / サンゴ礁 |
Research Abstract |
本年度は主に(1)サンゴ礁炭酸塩堆積物における有機態窒素の微生物分解,およびその分解産物である窒素栄養塩の砂表生微細藻類による利用,ならびに(2)固着性無脊椎動物による食物代謝に伴う窒素栄養塩の排出,および共生藻類によるその再利用を研究の素材として,手法の検討を中心に進めた。 堆積物中の微生物分解過程および堆積物表面の微細藻類による代謝活性の解析のためには,堆積物の柱状試料を用いた。実験環境の安定化とサンプリング上の理由から,堆積物中に海水を環流させる装置を開発し,環流の条件をなるべく現場環境に近づけるように設定した。一定期間の環流後,安定同位体で標識されたトレーサーを含む物質を添加し,必要期間,暗条件下において,もしくは光および温度条件が自然条件とほぼ一致するようにして培養を行なった。無脊椎動物およびその共生藻類の代謝活性による窒素動態の解析のためには,動物を閉鎖的な容器中に海水とともに入れ,トレーサーを含む物質を添加した後,自然光条件下または暗条件下で飼育する方法を採用した。 堆積物を用いた実験では,無機窒素栄養塩の代謝がきわめて速やかであるが,有機物に移行したラベル化合物は回転時間が非常に長くなることがわかっており,これらのさまざまな時間スケールに最適化させた実験系を組むことが課題となっている。炭酸塩堆積物における実験結果の特異性と一般性を珪酸塩堆積物との比較によって判断する必要がある。無脊椎動物を用いた実験系では,概して高い代謝活性が観察されたが,一般的なトレーサー物質を用いると動物自体の活性と付着する微生物の代謝の影響とを区別しがたいことがあった。動物の代謝を特異的に検出するべく,方法を改良する必要性が示唆された。
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