2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13780419
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
|
Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
木部 剛 静岡大学, 理学部, 助手 (80303527)
|
Keywords | 炭素循環 / 土壌呼吸 / 亜高山帯 / 森林生態系 / カラマツ林 / 森林限界 / 密閉法 |
Research Abstract |
富士山亜高山帯森林限界付近(標高約2,400m)のカラマツ・シラビソ林林床において、土壌呼吸の多点測定を行った。宝永火口外縁部の永久調査区において、上から50m区(カラマツ、ミヤマハンノキ優占)、120m区(カラマツ、シラビソ優占)、220m区(シラビソ優占)の遷移段階の異なる3箇所を選定し、各5点ずつの土壌呼吸速度を測定した。今年度は現象の把握のためにチャンバー内の二酸化炭素濃度増加を元にした測定法(cc:密閉法)を用いて土壌呼吸速度の測定を行った。測定は2001年9月14日、10月20日の2回、それぞれ太陽高度の高い11〜14時の間に行われた。同時に環境因子である土壌表面温度、土壌含水率の測定を行った。また同時に次年度の運用に向けてバッテリへの常時電源供給(風力発電による)を可能にしたOTCシステムの開発、試験を行った。また生育期間中の6月から11月にかけて、土壌への炭素の投入量を推定するためにリタートラップによる落葉落枝量の測定を行った。 9月には50m区でもっとも土壌呼吸速度が高く、かつばらつきももっとも大きかった。一方120m区では土壌呼吸速度が低く、ばらつきも小さかった。10月にもやはり50m区がもっとも高い土壌呼吸速度を示したが、9月に比べてばらつきは小さくなった。遷移の進行(土壌の発達)の度合いを考慮すると、森林限界上部よりも下部の方が高い土壌呼吸速度を示すことが予想されたが、今回は予想を覆す結果となった。土壌呼吸速度に大きく影響する土壌含水率は森林限界上部から下部にかけて増加する傾向がみられたが、土壌温度は逆に森林限界上部の方が高い傾向があり、これらの影響が複雑に関係し合っていることが考えられる。また土壌の未発達な森林限界上部の方が、植物根による呼吸の影響が大きく現れることも考えられる。 今年度森林限界付近の土壌呼吸速度の傾向が、密閉法によりある程度確認されたが、次年度はさらに多点連続観測を行い、日変化、季節変化のプロファイルを得て、環境因子との関連について詳細な解析を行う予定である。
|