2002 Fiscal Year Annual Research Report
対流圏OHラジカルの収支を支配する大気化学反応の解明
Project/Area Number |
13780421
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
高橋 けんし 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 助手 (10303596)
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Keywords | 対流圏 / OHラジカル / 大気モデル / ラボ実験 / レーザー誘起蛍光法 / オゾン / 光解離反応 / O(^1D) |
Research Abstract |
対流圏OHラジカルは、メタンなどの炭化水素や人為起源物質と効率よく反応するため、それらの大気寿命や消滅経路を決める重要なラジカルである。しかし、現存の大気化学モデルでは、大気中のOHラジカルの定常濃度の計算値が、フィールド計測と一致せず、OHラジカルの生成消滅過程には、未知の反応経路があることが指摘されている。最初に書いたように、OHラジカルは反応性が高いので、OHのモデル・実測の不一致は、対流圏化学の根幹をなす重要な問題である。そこで、本研究課題では、OHの生成に敏感に影響するオゾンの紫外光反応過程や、OHラジカルそのものの反応性などについて、ラボ実験による詳細な研究を行った。その成果は、合計10報の論文としてまとめられ、国際的な学術誌に掲載された(裏面参照)。 オゾンの光分解実験では、230-300nmの光解離反応で生成するO(^1D)の量子収率を真空紫外レーザー誘起蛍光分光法で求めた。2nm間隔で測定を行ったのは、我々が初めてである。これにより、230-300nmにおけるO(^1D)の生成量子収率は、波長にほとんど依存せず、だいたい一定の値(_》0.91)であることが明らかになった。また、大気モデルの世界標準となっているNASA・ジェット推進研究所のデータベース推奨値(0.95)に比べて、小さいことも分かった。次に、一次元光化学モデルにより、OHラジカルの定常濃度の変化を調べた。つまり、本研究で得られたO(^1D)の新しい量子効率の結果と、300-330nmにおける実験結果とをモデルに入力し、地球大気におけるHOx(=OH+HO_2)の定常濃度にどのように影響するかを調べた。その結果、対流圏では、オゾンの光解離反応で生成するO(^1D)が増加するため、H_2Oとの反応によるHOxの生成効率が増加するが、成層圏では本研究の結果を使うことで、HOxの生成効率が小さくなることが分かった。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] K.Takahashi, S.Hayashi他3名: "Quantum yields of O(^1D) formation in the photolysis of ozone between 230 and 308 nm"Journal of Geophysical Research. 107(D20). AC11-1 (2002)
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[Publications] K.Takahashi, Y.Matsumi他2名: "Atmospheric chemistry of CF_3CFHOCF_3 : reaction with OH radicals, atmospheric lifetime, and global warming potential"Journal of Geophysical Research. 107(D21). ACH4-1-ACH4-6 (2002)
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[Publications] K.Takahashi, T.Nakayama他5名: "Atmospheric lifetime of SF_5CF_3"Geophysical Research Letters. 29(15). 7-1-7-4 (2002)
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[Publications] K.Takahashi, N.Taniguchi他2名: "Non-thermal steady-state translational energy distributions of O(^1D) atoms in the stratosphere"Journal of Geophysical Research. 107(D16). ACH6-1-ACH6-6 (2002)
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[Publications] K.Takahashi, Y.Matsumi他2名: "Atmospheric Chemistry of CF_3CFHOCF_3 : Kinetics of the Reaction with Cl Atoms and Fate of CF_3CFO(・)OCF_3 Radicals"Chemical Physics Letters. 352. 202-208 (2002)
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[Publications] K.Hitsuda, K.Takahashi他2名: "Kinetics of the reactions of Cl(^2P_<1/2>) and Cl(^2P_<3/2>) atoms with C_2H_6,C_2D_6,CH_3F, and CH_3CF_3 at 298 K"Journal of Physical Chemistry. A105. 5131-5136 (2001)