2001 Fiscal Year Annual Research Report
光駆動型塩化物イオンポンプ、ファラオンスハロロドプシンのプロトンポンプへの変換
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13780520
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
鷲見 正人 北海道大学, 薬学研究科, 助手 (30281819)
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Keywords | レチナールタンパク質 / 古細菌 / 膜タンパク質 / イオンポンプ |
Research Abstract |
高度好塩菌で発見された4種のレチナール蛋白質は、高次構造やその光に対する振る舞いがよく似ている一方で、イオンポンプや光センサーといった機能分化を遂げている点で構造分子生物学的に興味深い材料である。本研究では特に、光駆動型プロトンポンプとして広く知られるバクテリオロドプシン(bR)と、塩化物イオンとして機能するハロロドプシン(hR)において、イオンの選択性や輸送方向の違いを制御するための微細構造の差異を知るために、すでに報告のあるbRを塩化物イオンポンプにする改変と逆、つまりhRをプロトン輸送ポンプに改変する構造上の制御が可能かを模索している。 1)phR-T126E 変異体のフォトサイクルの測定 bR様蛋白質は特定波長の光で励起され、吸収波長を変えながら変化し元に戻る「フォトサイクル」と呼ばれる反応を示す。活性中心に位置する残基を置換したT126E変異体は野生型にはないが、bRにはあるM中間体という極端に短波長側に吸収波長がシフトした光中間体をフォトサイクルに際して産生することが分かった。このことは、変異体分子内でプロトンの移動が行なわれていることを強く示唆する。ただ、変異体のM中間体の寿命は、bRのそれ(数ミリ秒)にくらべて著しく長い(数十秒)。これは効率のよいプロトン授受のための構造の補完が、T126E置換だけでは十分でないことを示唆する。 2)phR-T126E 変異体の光電応答の測定 錫の酸化膜を付したガラスは、表面に接する水溶液中のプロトン濃度に敏感に反応する高感度pH電極として機能する。本センサーを用いた微弱電圧変化計測システムにおいて、標品溶液を接触させた状態で光照射を行なった。蛋白質内部からプロトンが放出、もしくは内部への取り込みがあれば、周辺のpH変化、ひいては電圧の変化として感知される。結果、T126E変異体は、野生型には見られない環境とのプロトンの授受を行なっていることを示唆する結果が得られた。
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