2002 Fiscal Year Annual Research Report
高分解能NMRによるGroE-基質複合体の直接観測
Project/Area Number |
13780533
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
星野 大 大阪大学, 蛋白質研究所, 助手 (70304053)
|
Keywords | 分子シャペロン / GroE / 立体構造変化 / 核磁気共鳴 / 折れたたみ反応 / 重水素交換 |
Research Abstract |
大腸菌の分子シャペロンであるGroELは変性した蛋白質を基質として認識・結合し、GroESおよびATP存在下でその蛋白質の折れたたみを補助することが知られている。本研究では、GroELに結合する際の基質蛋白質の構造変化を詳細に調べることを目的とし、基質蛋白質として分子内部に3つのジスルフィド結合を有するヒトβ2グリコプロテインIドメインVを用いて、ジチオスレイトールによるジスルフィド結合の還元反応およびNMRによる重水素交換反応の追跡を行った。 ジチオスレイトールなどの還元剤による分子内ジスルフィド結合の還元速度は、蛋白質の安定性・立体構造に大きく依存する。本研究ではまず、GroEL存在下、非存在下においてジチオスレイトールによるドメインVの還元反応を逆相HPLCを用いて追跡した。その結果、GroELの存在により基質蛋白質の分子内ジスルフィド結合の還元速度が著しく増加することが明かとなった。さらに、還元速度の増加は共存するGroELの浪度に依存していた。 次に、GroELとの結合が基質蛋白質の構造に及ぼす影響を個々のアミノ酸残基について詳細に解析するためにm15N安定同位体標識したドメインVを用いて、NMRによる重水素交換反応の追跡を試みた。まずGroEL非存在下でドメインVの重水素交換反応を行ったところ、溶媒から強く保護されているコア領域の存在が確認された。さらにGroEL存在下において同様に重水素交換反応を行ったところ、非存在下において交換から強く保護されている残基においても反応が速やかに進行し、分子内部に存在する安定なコア領域が崩壊していることが示唆された。 これら一連の結果により、GroELとの結合により、基質蛋白質において分子全体にわたって大規模な構造変化が引き起こされるということが明らかとなった。なお、本研究成果はProtein Science誌に発表した。
|
Research Products
(1 results)