2001 Fiscal Year Annual Research Report
高度好熱菌MutM蛋白質を用いた活性酸素障害DNA塩基除去修復機構の解析
Project/Area Number |
13780565
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
菅原 光明 理化学研究所, 構造生物物理研究室, 基礎科学特別研究員 (90332288)
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Keywords | 酸素ラジカルDNA障害 / DNA塩基除去修復 / MutM蛋白質 / X線結晶構造解析 |
Research Abstract |
酸素呼吸の代謝の過程で生じる酸素ラジカル種はDNAに様々な傷害をおこし、細胞死や癌化の原因となる。特にグアニンの酸化によって生じる8-オキソグアニン(GO)は量的にも多く、シトシンともアデニンとも塩基対を形成できるので突然変異を誘発する。MutMはGO : C塩基対からGOを直接取り除く塩基除去修復酵素であり、高度好熱菌Thermus thermophilus HB8由来のMutMのX線結晶構造解析を行い、1.9Å分解能での3次元構造決定を行った。MutM分子は2つのドメインからなり、ドメイン間には2重鎖DNAが入ることのでき、分子表面静電ポテンシャルは正である大きな溝があった。MutMの触媒反応に重要なN末端のプロリン残基はこの溝の底に位置していた。MutMホモログ間で保存されたアミノ酸残基はこのプロリンの周りに集中していた。また、MutMは、既にDNA結合が示唆されていたZincフィンガーモチーフの他に、多くの塩基除去修復酵素にみられるヘリックス・ヘアピン・ヘリックス(HhH)モチーフと類似の構造モチーフを持ち、これらもDNA結合の溝に位置していた。MutMと傷害DNAの相互作用を予測するために、複合体モデルを作成し分子動力学計算を行った。得られたモデルから、MutMの溝にある保存された残基がDNAの傷害塩基対を被うように作用し、触媒反応に重要な働きをすることが予想された。特に2つのDNA結合モチーフは、他の塩基除去修復酵素と同様の機能を果たしていると考えられた。MutMは他の塩基除去修復酵素と異なり、傷害塩基を除去するだけでなく、DNA鎖の3'側と5'側を両方切る活性があるが、それぞれに対応する2つの触媒基の存在が推定された。3'側のみを切断する他の酵素には触媒基が1つしかなく、MutMにおいて2つの触媒基が関与する反応機構が支持された。現在、構造とモデルを基に触媒反応、気質認識に重要と思われる部位特異的変異体を作成し、その活性を調べている。
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