2002 Fiscal Year Annual Research Report
体節形成におけるNotchシグナリング遺伝子の相互作用の発生遺伝学的解析
Project/Area Number |
13780597
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Research Institution | National Institute of Health Sciences |
Principal Investigator |
高橋 雄 国立医薬品食品衛生研究所, 毒性部・第4室, 主任研究官 (60321858)
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Keywords | マウス / 分子遺伝学 / 形態形成 / Notch / 体節形成 |
Research Abstract |
Dll1とDll3によるNotchシグナリングに対して、Psen1がどのように関与するのかを明らかにするため、Dll1とDll3各々のノックアウトマウスとPsen1ノックアウトマウスを交配し、ダブルノックアウトマウスの表現型を解析した。まず後半部のマーカー遺伝子Uncx4.1の発現は、Dll1ノックアウトマウスでもPsen1ノックアウトマウスでも失われており、Dll1/Psen1ダブルノックアウトマウスでも同様であることから、Uncx4.1の発現はPsen1依存的なDll1-Notchシグナリングにより誘導されると予想された。しかし、前半部のマーカー遺伝子Cer1の発現は、Dll1ノックアウトマウスでは失われるのに対してPsen1ノックアウトマウスでは拡がっていた。この拡がった発現はDll1/Psen1ダブルノックアウトマウスでは失われることから、Psen1非依存的なDll1-Notchシグナリングにより誘導されると考えられる。これらの前半部のマーカー遺伝子の発現は、Mesp2の発現を反映していると考えられた。次にDll3によるNotchシグナリングに対するPsen1の関与を検討した。Mesp2及びその下流にある前半部のマーカー遺伝子Cer1,EphA4の発現はDll3欠損マウス、Psen1ノックアウトマウス、Dll3/Psen1ダブルノックアウトマウスの3者で中程度に低下し、ほぼ同じレベルであった。このことからMesp2の発現には、Dll3とPsen1が共通に関与する経路が関わっていると思われた。 一方、後半部のマーカー遺伝子Dll1,Uncx4.1の発現パターン、及び脊椎骨の形態については異なった関係が見い出された。Psen1ノックアウトマウスではDll1,Uncx4.1のストライプ状の発現が完全に失われ、神経弓の椎弓根が欠損している。Dll3欠損マウスでは、Dll1,Uncx4.1の発現は無秩序な斑紋状のパターンをなし、椎弓根の位置に不規則な骨要素が観察される。Dll3/Psen1ダブルノックアウトマウスでは、Dll3欠損マウスよりも低いレベルのかすかな斑紋状のUncx4.1の発現パターンが観察された。さらに、Dll3欠損マウスよりも少ない不規則な骨要素が観察された。このことから、Dll3/Psen1ダブルノックアウトマウスはDll3欠損マウスとPsen1ノックアウトマウスの中間的な形質をもち、いずれとも異なることがわかった。従って、Dll3はPsen1と独立にDll1,Uncx4.1の発現を抑制することができ、またPsen1依存的なDll1-NotchシグナリングはDll3と独立にDll1,Uncx4.1の発現を誘導すると考えられる。
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Research Products
(1 results)