2001 Fiscal Year Annual Research Report
新しいモデル動物を用いた神経因性疼痛の上位中枢に及ぼす可塑的変化の検討
Project/Area Number |
13780620
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
永野 昌俊 日本医科大学, 医学部, 助手 (60271350)
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Keywords | 神経因性疼痛 / 神経栄養因子 / 神経可塑性 / 脳 |
Research Abstract |
神経因性疼痛については、近年いくつかのモデル動物における研究から主に脊髄や末梢レベルでの機構の解明が進んできているが、上位中枢において可塑的変化について調べた報告はない。そこで、その可能性を探るべく、幼若期に脊髄を断裂した新しいモデル動物を確立し、可塑的変化に深く関与するといわれる神経栄養因子のその動物における上位中枢を含めたさまざまな部位における発現の変化を調べることを目的に研究を始めた。 まず、神経栄養因子であるNGF、BDNF、NT-3、NT-4、GDNFのmRNA及びタンパク質の定量系として競合的RT-PCR及びtwo-site EIAを確立した。この系を用い、ラット骨格筋(gastrocnemius、soleus)における神経栄養因子の生後の発現変化を調べたところ、それぞれの物質が筋肉ごとに異なる発現パターンを示し、タンパク質の発現変化とmRNAの発現変化に乖離が見られた(論文投稿中)。これらの神経栄養因子は遺伝子転写後、タンパク生成の過程で複雑な制御機構があるものと思われる。 神経因性疼痛の発症に関与するとの示唆のあるNGF及びGDNFについて、モデルとして広く用いられる坐骨神経結紮動物で、脊髄、後根神経節(DRG)、坐骨神経におけるタンパク質量変化を調べたところ、NGFは坐骨神経結紮部位で減少、GDNFはDRGで減少することがわかった。また、GDNFの脊髄へのポンプを用いた継続投与が疼痛を抑制した。脊髄-末梢レベルでは神経因性疼痛の発症にNGF及びGDNFが関与するとする示唆を支持する結果が得られた(論文投稿中)。 生後2週以内の幼若期に胸髄を断裂したラットは断裂後、2週経過時(一ヶ月齢)にも生存、離乳して自立運動も可能な状態にある。この動物では、ペントバルビタール麻酔で、覚醒に長時間を要するなど中枢レベルで何らかの変化が生じている可能性が示唆された。
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