2002 Fiscal Year Annual Research Report
中枢ニューロンの代謝型グルタミン酸受容体応答に対する細胞外カルシウムの作用
Project/Area Number |
13780630
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
田端 俊英 金沢大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (80303270)
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Keywords | 中枢神経系 / ニューロン / 代謝型グルタミン酸受容体 / 小脳 / プルキンエ細胞 / 細胞外カルシウム / パッチクランプ / カルシウム・イメージング |
Research Abstract |
代謝型グルタミン酸受容体mGluRは中枢神経系の最も一般的な興奮性伝達物質グルタミン酸を受容し、学習・記憶の生物学的基礎であるシナプス可塑性に関与する重要な受容体である。近年発現系を用いた研究によってmGluRがグルタミン酸だけでなく細胞外カルシウムによっても活性化あるいは機能修飾される可能性が示唆された。本研究では1型mGluR(mGluRl)を自然発現する単離培養マウス小脳プルキンエ細胞を標本として、細胞外カルシウムが実際に中枢ニューロンの自然発現mGluRの機能に影響を与えるか否かを検討した。カルシウム・イメージングにより、mGluRlにカップルした細胞内ストア・カルシウム放出を測定した。生理学的濃度(2mM前後)の細胞外カルシウムをプルキンエ細胞に急速投与すると、この細胞内ストア・カルシウム放出が起こることを観察した。またこの反応はmGluRlノックアウト・マウス由来のプルキンエ細胞では見られなかった。これらの結果は細胞外カルシウムが中枢ニューロン自然発現mGluRを直接活性化し得ることを示している。パッチクランプ法によってmGluRlとカップルした内向き陽イオン電流を指標に、プルキンエ細胞mGluRlのグルタミン酸類似体DHPGに対する応答性を調べた。2mMの細胞外カルシウムの存在下では非存在下に比べて低濃度のDHPGによって内向き電流を活性化できた。また2mMの細胞外カルシウムは内向き電流の振幅を増大させ、不活性化を加速することが分かった。これらの結果から、細胞外カルシウムが中枢ニューロン自然発現mGluRのグルタミン酸応答性を増強することが明らかになった。本研究の成果は生理的条件下で細胞外カルシウムが恒常的にシナプス可塑性などmGluRの関与する中枢ニューロン機能を促進していることを示唆している。
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[Publications] Tabata T.: "Extracellular calcium controls the dynamic range of neuronal metabotropic glutamate receptor responses"Molecular and Cellular Neuroscience. 20・1. 56-68 (2002)
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[Publications] Tabata T.: "Heterogeneous intrinsic firing properties of vertebrate retinal ganglion cells"Journal of Neurophysiology. 87・1. 30-41 (2002)