2001 Fiscal Year Annual Research Report
大脳皮質視覚野のT型Ca^<2+>チャネルの発達に及ぼす視覚環境の影響
Project/Area Number |
13780652
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
吉村 由美子 名古屋大学, 環境医学研究所, 助手 (10291907)
|
Keywords | 視角野 / スライス標本 / 興奮性シナプス / T型Ca^(2+)チャネル / 暗室飼育 / 長期増強 / ホールセルパッチクランプ法 / ラット |
Research Abstract |
大脳皮質視覚野ニューロンの視覚刺激に対する選択的反応性は、生後発達の一時期(感受性期)の視覚体験に依存して可塑的に形成される。この感受性期は開眼前からの暗室飼育により延長し、延びた感受性期は短期間の視覚体験により終了する。これまでに我々の研究室ではネコやラット大脳皮質視覚野スライス標本を用いて、NMDAチャネルではなくT型Ca^(2+)チャネルの活性化を必要とする電場電位の長期増強は感受性期に限って発生し、生後直後より暗室飼育すると成熟しても長期増強がみられ、その後短期間の正常視覚体験によりその発生も消失することを見いだした。本年度はこの電場電位の長期増強が興奮性シナプスの変化に起因するかを検討する目的で、ラット視覚野スライス標本上の2/3層ニューロンから細胞内記録法及びホールセルパッチクランプ法を用いて、薬理学的に抑制性シナプス後電位を阻害した状態で興奮性シナプス後電位(EPSP)を記録した。T型Ca^(2+)チャネル依存性長期増強の誘発に有効な条件刺激を与えると、EPSPの長期増強が誘発された。また記録した細胞にトレーサーを注入し細胞内染色することにより長期増強がみられたシナプス後細胞は錐体細胞であることを形態学的に確認した。また発達や視覚環境操作によりT型Ca^(2+)チャネル自身が受ける影響を調べる目的で、T型Ca^(2+)チャネルを選択的に活性化させ、その電流を解析した。その最大振幅は発達期に比べ成熟すると有意に減少した。暗室飼育した成熟動物ではこの減少がみられなかったが、その後2日間の視覚体験により正常の成熟動物の振幅レベルまで低下した。また、活性化と不活性化の膜電位依存性にはどの群間でも差はみられなかった。以上の結果は視覚反応可塑性およびシナプス可塑性の感受性期はT型Ca^(2+)チャネルの機能的変化に起因することを示唆する。
|