2002 Fiscal Year Annual Research Report
野生型遺伝子の導入によるI型糖尿病ラット(KDP)の表現型回復実験
Project/Area Number |
13780659
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
横井 伯英 千葉大学, 大学院・医学研究院, 助手 (70311610)
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Keywords | 1型糖尿病 / 感受性遺伝子 / ポジショナルクローニング / 自己免疫 / トランスジェニック / ラット / Cblb遺伝子 |
Research Abstract |
本研究の目的は、1型糖尿病モデルKDPラットの主要な感受性遺伝子座Iddm/kdp1の遺伝子本体を同定し、当該遺伝子に対応する野生型遺伝子の導入によるKDPラットの表現型回復実験を行って、当該遺伝子が真の原因か否かを明らかにすることである。 これまでに、Iddm/kdp1の候補遺伝子としてCblb (Casitas B-lineage lymphoma b)遺伝子を単離し、KDPラットに特異的なナンセンス変異を同定した。さらに、マウスのH-2K^dプロモーター(全身性に発現)、CAGプロモーター(全身性に発現)、Lckプロモーター(T細胞特異的に発現)、ヒトインスリンプロモーター(膵臓β細胞特異的に発現)の支配下に野生型Cblb遺伝子を発現するトランスジェニックラットを作出した。 今年度は、戻し交配にてKDPラットの遺伝的背景にトランスジーンを移し、トランスジーンの有無と膵島炎および糖尿病の発症との関連を調べた。H-2K^dプロモーターを用いて2種類のトランスジェニック系統が得られ、120日齢まで糖尿病の発症を観察した結果、一方の系統では完全に発症が抑制されていた。他方は糖尿病を発症するものがあったが、発症率は有意に抑制されていた。トランスジェニック系統では膵島炎の発症も有意に抑制されていた。このことから、Cblbの変異がKDPラットの病態に関与することが明らかになった。 また、KDPラットの組織学的解析から、膵臓以外にも甲状腺、顎下腺、腎臓などの臓器にリンパ球浸潤が認められ、自己免疫の症状を呈していることがわかった。これらのことから、Cblbは自己免疫を抑制する分子であり、CblbはKDPラットの1型糖尿病の主要な感受性遺伝子であると結論づけた。 この成果は論文として発表し、朝日新聞、毎日新聞、日本経済新聞、千葉日報、科学新聞等に掲載された。
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Research Products
(1 results)