Research Abstract |
実世界にて観測される種々の時系列情報を,滑らかなシステムからの出力として捉えるのではなく,ある事象が,「いつ(位相情報)」,「どの程度の大きさ(振幅情報)」で発生したのかというように,即ち,イベントが発生したように捉えることにより,より自然な形で解析を行える場合がある.本年度は,このように振幅情報と位相情報により記述することが妥当であると考えられる種々の実現象に適用している. 具体的な解析方法としては,従来の理論を上記の枠組みに合う形に拡張することで解析を行っている.振幅情報と位相情報を明示的に導入した系としてx(t+1)=f(x(t),τ(t)) τ(t+1)=g(x(t),τ(t))とする.ここで,x(t)は,離散時刻tにおける振幅情報,τ(t)は,x(t-1),x(t)間の発生時間間隔,f, gは各々振幅情報,位相情報のダイナミクスである. このような系の存在を仮定し、カオス時系列解析における埋め込み定理を拡張する.即ち,再構成状態空間をv_1(t)={x(t),...,x(t+(m-1)L),τ(t),...,τ(t+(l-1)L)}とする. 本年度は,昨年度において得られた数理モデルに対する知見を基に,種々の実データに対する適用を行った.具体的には,1.経済指標の変動2.インターネットトラフィックデータ3.レーザ振動におけるカオス現象である.その結果,本研究計画で提案する枠組みによる複雑事象の捉え方が,十分有効であることが示された. 今年度の研究計画では,数理モデルから作成したデータに対してだけではなく,実データに対する適用の検討を行った.来年度以降は,上記以外の実システムに対する適用可能性を検討する必要がある. また,本研究において導入するイベントダイナミクスの同定法により,カオスの特徴の一つとされる長期的には予測精度が低下する性質の改善可能性がある.現在,数理モデルに基づく数値実験により検討中であるが.来年度も引き続き行っていく予定である.
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