2001 Fiscal Year Annual Research Report
心筋細胞内情報伝達系をターゲットとした心不全治療の試み
Project/Area Number |
13832004
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
瀧原 圭子 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (70252640)
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Keywords | 心不全 / STAT / サイトカイン / 情報伝達 / リモデリング / VEGF |
Research Abstract |
Doxorubicin(Dox)などによる心筋細胞傷害の抑制に、JAK/STAT系が重要な役割を果たしていることをこれまでに報告してきた。その中でも、特にSTATを介してbcl-xLが誘導されることに注目して、本研究においてまずその役割についての検討を重ねた。心筋細胞培養上清へのDox添加によりTUNEL陽性細胞の増加、MTSassayによるviabilityの低下およびCPKの放出が観察されたが、アデノウイルスベクターを用いたbcl-xL遺伝子導入心筋細胞(BCLにおいて、これらはすべて有意に抑制されていた。BCLにおいて観察された効果の分子機序を明らかにする目的で、Doxにより誘導される活性酸素種(ROS)を測定したところ、コントロールとBCLにおいて差は認められなかったが、チトクロームcの放出、caspase-3活性の増強、Baxの発現はすべて著しく抑制されていた。Doxはさまざまな心筋特異的遺伝子の発現を抑制することが知られているが、BCLにおいてこれらはコントロールと同様に抑制されていた。 次にJAK/STAT系の酸化ストレスヘの関与についての検討を行った。LIFによりgp130を刺激すると、培養心筋細胞においてMnSODの発現増強が認められ、虚血再灌流に伴う心筋細胞傷害が軽減された。LIFの前投与がなくても持続活性型STAT3(caSTAT3)の遺伝子導入によりほぼ同程度の効果が得られた。LIFの作用はドミナントネガティブ型STAT3(dnSTAT3)を導入しSTAT3のシグナルを阻害することにより抑制されたが、MAP kinase阻害剤では影響を受けなかった。 本研究結果より、bcl-xLの心筋細胞における発現増加は、DoxによるROS産生および心筋特異的遺伝子の発現抑制を改善することはないが、Baxの発現レベルを低下することにより、心筋細胞アポトーシスを抑制することが明らかとなった。さらにSTAT3は活性酸素種による心筋細胞傷害を軽減し、心不全に伴う心筋リモデリングに重要な役割を果たしていると考えられた。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] S.Negoro et al.: "Glycoprotein130 regulates cardiac myocyte survival in doxorubicin-induced apoptosis through P13-kinase/Akt phosphorylation and Bcl-xL/Caspase-3 interaction"Circulation. 103. 555-561 (2001)
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[Publications] M.Izumi et al.: "Bone morphogenic protein-2 inhibits serum deprivation-induced apoptosis of neonatal cardiac myocytes through the activation of smad1 pathway"J Biol Chem. 276. 31133-31141 (2001)
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[Publications] S.Negoro et al.: "Activation of STAT3 protects cardiomyocytes from hypoxia/reoxygenation-induced oxidative stress through the upregulation of manganese superoxide dismutase"Circulation. 104. 979-981 (2001)
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[Publications] T.Osugi et al.: "Cardiac-specific activation of signal transducer and activator of transcription 3 promotes vascular formation in the heart"J Biol Chem. 277. 6676-6681 (2002)
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[Publications] K.Kunisada et al.: "Bcl-xl reduces doxorubicin-induced myocardial damage but fails to control cardiac gene downregulation"Cardiovasc Res. (in press). (2002)
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[Publications] K.Yamauchi-Takihara: "gp13O mediated pathway and LV remodeling"J Card Fail. (in press). (2002)
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[Publications] 瀧原圭子: "gp130 心筋細胞増殖および保護における役割. 「心臓における生命現象の分子生物学」"小室一成編. 181-188 (2001)