2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13837008
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
牛山 佳幸 信州大学, 教育学部, 教授 (60176659)
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Keywords | 不淫戒 / 女人堂 / 比丘尼石 / 血盆経 / 服忌令 / 結界 / 浄穢観 / 女人往生 |
Research Abstract |
女人禁制文書(寺院法制関係文書のうち女人禁制条項を含むもの)の収集を進め、現時点で平安期から戦国期に至る約70通を確認した。これらのうち、平安期のもの6通、鎌倉期のもの22通について内容を分析し、検討した。その結果、文書の発給主体によって、(1)寺内の主導的地位にあった僧が定めて弟子や居住僧らに誓わせた形式のもの、もしくは遺言として残した形式のもの、(2)寺内の僧侶が集会を開いて評議によって取り決めたもの、(3)領主や檀那が定めて寺院に対して遵守するように求めたもの、の三つに分類することができ、それはそのまま、当該期の女人禁制のあり方にそのまま反映されていることを明らかにした。すなわち、第一に特定の持律僧の強い指導力によって保たれている女人禁制、第二に住僧らの意思で自主的に守ろうとした女人禁制、第三に権力者や外護者のような外部からの強制力によって維持できた女人禁制の、三つのタイプである。そして、全体的にはこの時期の女人禁制が、第一、第二のような、いわば自主規制としての意味を持つものが圧倒的に多く、そのために女人禁制を守れるかどうかは、個別寺院の住僧らの持戒意識の有無にかかっていたこと、また、禁制の度合いも寺によって様々で、年齢や親等による制限、時刻による制限、目的別による制限、出家の有無による制限、特定の身分・階層による制限、などの事例があることを指摘した。とくに注目されるのは、高齢で身寄りのない寡婦には、山内居住を認めるといった格別の配慮がなされている寺がしばしばあることで、この点は女人禁制の有する重要な側面であるとともに、こうした例外規定が破戒行為を助長させる要因ともなっていたとみられることを指摘した。
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Research Products
(2 results)