2003 Fiscal Year Annual Research Report
日本の母子政策に関する研究―リプロダクティブ/ヘルス・ライツの視点から―
Project/Area Number |
13837014
|
Research Institution | Naruto University of Education (Doshisha Women's College of Liberal Arts.) |
Principal Investigator |
中山 まき子 鳴門教育大学, 学校教育学部, 助教授 (90253236)
|
Keywords | 国家政策 / 地方自治体政策 / 厚生省事業 / 身体 / 助産 / 母子保健 |
Research Abstract |
本研究は、女性と子どもの身体に対して行われる国の政策が、どのように地域社会や個人へと繋がり、地方自治体政策や個人の身体を規程していくのかを究明するため、厚生省児童局起案の母子健康センター事業(1957年予算化、最高時には全国に700余の施設が設置)という具体的政策に着目し研究を行った。方法として、同事業の全国調査をアンケートを用いた量的調査と、現地での聞き取りという質的調査と両面から実施し、母子健康センター施設が全国各地でどのように盛衰してきたのか、その際の地方自治体政策の特徴や差異(自律性)は如何なる点にあるのかを分析した。 2002年現在、施設登録されている126の母子健康センターに対してアンケート調査を実施し、量的調査を分析した。その結果、回収された50施設の中で、助産と母子保健の両者の機能を有して現在も稼働している施設は2つのみで、その他の施設の全ては、まず助産部門を閉鎖し、次に保健指導部門を閉じ、新しい施設に切り替えられていた。閉鎖時期は、ばらつきがあるが、概ね平成一桁期までには、全国の大多数の母子健康センターが機能を停止していた。 質的調査として、3年の研究期間で、北海道、中部地方、関西地方、九州南部地方の母子健康センターを訪問し、聞き取り調査を実施した(対象者:自治体職員、保健師・助産師・旧助産婦ほか)。事例研究の結果を、施設別の運営推移表にして作成している。1957年事業開始当時の設置要綱に則した施設運営を継続している2施設(岐阜県・大阪府)の特徴は次の通りであった。1)開所から調査時現在まで分娩総件数は、運営予算に困る程に減少してはいない。2)村市長・村市議会が同施設の必要性を十二分に認識している。3)嘱託医師の協力体制が強固に作られ続けている。4)先輩助産師が後輩助産師を育成している(助産所出産における技術・心得等の伝達/継承)。5)施設で働く助産師同士が施設内の情報・入所者の情報を共有し、相互の料力・支援体制が作られている。他方、閉鎖した施設調査からは、ほとんどの施設が「助産部門」を病院に移管していたことがわかった。その理由の大部分は上記の2)と3)に問題点やトラブルが発生し、その結果、閉鎖されてきたことを確認した。中には、住民運動も引き起こされたが、それでもなお助産部門は閉鎖された。 以上から、公営施設(とくに助産所)が住民のニーズに応えつつ施設運営を行い続けるためには、1)地方自治体の首長が母子保健に対する明確な理念や考え方、方向性を有していること、2)助産師間で次の世代を育成しようとする育成力と技術継承力があること、以上の二点が重要な要因として抽出される。またこれらは、当該自治体における「政策の自律性」(独自性)と深いかかわりを持つと考えられる。
|
Research Products
(2 results)