2001 Fiscal Year Annual Research Report
「障害児の母親」の意識の形成と変容のプロセスに関する研究-「母親」役割が強化された事例としての検討-
Project/Area Number |
13837016
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan University of Health Sciences |
Principal Investigator |
中川 薫 東京都立保健科学大学, 保健科学部, 助教授 (00305426)
|
Keywords | 障害児の母親 / 育児意識 / 質的分析 |
Research Abstract |
本年度は、「障害児の母親」へのインタビューと、「健常児の母親」のインタビュー、育児体験手記等の質的分析より、両者の育児意識の比較分析を試みた。 障害児の母親に対するインタビューは、当事者グループのリーダーに紹介を依頼した。障害の内容は、知的、情緒、身体、重複、重度重複(医療的ケアを常時必要とする児も含む)であり、母親の年齢も20代、30代、40代、50代、60代と、幅広く対象とした。インタビューは、テーマを大きく設定した上で自由に語ってもらう半構造化面接で、許可を得た上で録音し、逐語録化し、質的分析を行った。 健常児の母親に対しては、インタビュー、育児体験手記、インターネットによるトークなどを分析の対象とし、質的分析を行った。 両者の育児意識を比較すると、次のような特徴が伺われた。 「障害児の母親」は、障害児の出産により、子の人生に対する責任を強く感じ、子に対して自分をトータル・コミットする。そして、その結果、療育や訓練といった育児に対して、ともすると他の犠牲をかえりみずに、積極的に参加していこうとする態度が生まれる。これらの育児意識は、母親自らの内発的な動機づけから生まれるものであることに、特徴がある。 それに比較して「健常児の母親」は、「障害児の母親」ほど強いトータル・コミットメントの体験を持たず、しかるに、周囲からは「よい母親像」を期待されるなど、周囲との関係の中から育児ストレスを体験するケースが見受けられた。したがって、これらの育児意識は、規範的拘束と関連が深いことが示唆された。
|
Research Products
(2 results)
-
[Publications] 山崎喜比古, 中川薫: "山崎喜比古(編)『健康と医療の社会学』"東京大学出版会. 241 (2001)
-
[Publications] 中川 薫(分担執筆): "山本和郎(編)『臨床心理学的地域援助の展開-コミュニティ心理学の実践と今日的課題-』"培風館. 260 (2001)