2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13837033
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
伊藤 公雄 大阪大学, 人文科学研究科, 教授 (00159865)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金子 珠理 天理大学, 付属おやさと研究所, 研究員
櫻井 義秀 北海道大学, 大学院・文学研究科, 助教授 (50196135)
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Keywords | 宗教運動 / 性支配 / 文化的構造 / ジェンダー規範 / 宗教教団 / ジェンダー・ヒエラルキー |
Research Abstract |
本研究は宗教研究とジェンダー研究という両分野に精通し、研究上の交流を行ないながら、それぞれの知見を踏まえた上で宗教にみられる性支配の構造と文化的構造を解明しようと試みたものである。各自担当した宗教運動や教団の活動を積極的に参与観察することに研究の主軸を置いた。また、出版物などを通じての教義分析に加え、関係者や信者メンバーへのインタビューによる調査に重点を置き、当事者たちの声からその宗教経験を再構築するような手法を試みた。その結果、すべてを網羅したとは言えないが、ジェンダーと宗教の基本的問題はほぼ含めることができたのではないかと思われる。 研究を進めるにあたり、従来の先行研究を踏まえて、以下の点を本研究の特徴点として意識した。 (1)調査に基づく実証的研究:従来の宗教とジェンダー研究においては、伝統的な宗教教義の分析とその性差別批評に力点が置かれてきた。しかし、信者たちの意識や行動原理に商店を当てる実証的研究は多くはない。私たちは信者たちや教団の言説や活動のなかから問題となる点を抽出し、そのジェンダー・ヒエラルキーや葛藤の様子を明確にすることを目的とした。 (2)共同性:ジェンダーに焦点を当てた宗教研究の蓄積はまだ少ないなか、その社会背景との関連を検証するため、共同研究という形式をとることで、互いの関心を有機的に連関させて多様な宗教とジェンダーの現在を描出することをめざした。 (3)ジェンダー・バランス:ジェンダー研究はいまだ調査する側/される側双方とも女性になりがちである。本研究ではメンバー構成においてもバランスのとれた研究をめざした。 (4)文化的特性とグローバリゼーション:本研究では、個々の宗教運動のジェンダー状況だけを分析対象とするだけではなく、その背後の問題、つまり文化的社会的次元のジェンダー規範との連関も国際比較的な観点から考察するようにつとめた。
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Research Products
(25 results)
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[Publications] 伊藤公雄: "日本社会におけるジェンダー政策の現状と課題"法社会学(日本法社会学会). 53. 117-129 (2001)
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[Publications] 伊藤公雄: "男女共同参画社会の見取り図-バックラッシュ(逆流)を越えて"都市問題研究(都市問題研究会). 54(3). 17-29 (2002)
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[Publications] 伊藤公雄: "社会学テキストの可能性"フォーラム現代社会学(関西社会学会). 2. 3-5 (2003)
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[Publications] 櫻井義秀: "「宗教被害」と人権・自己決定をめぐる問題-統一教会関連の裁判を中心に"現代社会学研究(北海道社会学会). 15. 63-81 (2002)
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[Publications] 櫻井義秀: "「カルト」調査研究の課題"宗教と社会(「宗教と社会」学会). 8. 245-249 (2002)
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[Publications] 櫻井義秀: "宗教/ジェンダー・イデオロギーによる「家族」の構築"宗教と社会(「宗教と社会」学会). 9. 43-66 (2003)
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[Publications] 櫻井義秀: "「マインド・コントロール」論争と裁判"北海道大学文学研究科紀要. 109. 59-175 (2003)
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[Publications] 金子珠理: "社会福祉とジェンダー(6)"グローカル天理(天理大学おやさと研究所). 2001.10. 11-11 (2001)
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[Publications] 金子珠理: "社会福祉とジェンダー(7)"グローカル天理(天理大学おやさと研究所). 2001.12. 14-14 (2001)
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[Publications] 熊田一雄: "プロミス・キーパーズにおける保守的セクシュアリティ観について"愛知学院大学人間文化研究所紀要. 17. (2001)
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[Publications] 熊田一雄: "大本聖師のトランスジェンダー志向を再考する"愛知学院大学文学部紀要. 33. (2002)
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[Publications] 猪瀬優理(研究協力者): "脱会プロセスとその後-ものみの塔聖書冊子協会の脱会者を事例に"宗教と社会(「宗教と社会」学会). 8. 19-38 (2002)
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[Publications] 薄井篤子(研究協力者): "女性の<霊性>と仏教"宗教研究(日本宗教学会). 76(2). 135-160 (2002)
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[Publications] 日比野由利(研究協力者): "共依存と女性-立正佼成会の事例より"現代社会理論研究(現代社会理論研究会). 11. 162-175 (2001)
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[Publications] 日比野由利(研究協力者): "女性信徒の組織化-教団における官僚制機構の創出とジェンダー"現代社会理論研究(現代社会理論研究会). 12. 232-243 (2002)
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[Publications] 日比野由利(研究協力者): "新宗教における「女性」戦略"年報社会学論集(関東社会学会). 2003. 1-13 (2003)
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[Publications] 堀江有里(研究協力者): "同性愛者排除の論理-キリスト教における「罪」概念の引用への一考察"人権教育研究(花園大学人権教育研究センター紀要). 10. 11-39 (2002)
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[Publications] 堀江有里(研究協力者): "「レズビアン存在」と「シスターフッド」-日本基督教団を事例に"女性学年報(日本女性学研究会). 23. 136-154 (2002)
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[Publications] 堀江有里(研究協力者): "権力構造の問題構制-セクシュアル・ハラスメント訴訟を事例から"人権教育研究(花園大学人権教育研究センター紀要). 11. 1-25 (2003)
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[Publications] 堀江有里(研究協力者): "キリスト教と「結婚式」-女と男の不均衡な関係"季刊 Sexuality("人間と性"教育研究協議会). 9. 128-131 (2003)
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[Publications] 堀江有里(研究協力者): "同性愛者差別の背景-「根拠」とされる聖書"季刊 Sexuality("人間と性"教育研究協議会). 11. 132-135 (2003)
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[Publications] 堀江有里(研究協力者): "差別に抗うために-コミュニティの可能性"季刊 Sexuality("人間と性"教育研究協議会). 12. 128-131 (2003)
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[Publications] 堀江有里(研究協力者): "反差別の困難-カテゴリーとしての<共働者>"人権教育研究(花園大学人権教育研究センター紀要). 12(近刊(2004.3)). (2004)
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[Publications] 堀江有里(研究協力者): "レズビアンの不可視性-日本基督教団を事例として"解放社会学研究(日本解放社会学会). 18(近刊(2004.3)). (2004)
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[Publications] 伊藤公雄, 國信潤子, 樹村みのり: "女性学・男性学-ジェンダー論入門"有斐閣. 319 (2002)