2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13852004
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
前野 悦輝 京都大学, 国際融合創造センター, 教授 (80181600)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石田 憲二 京都大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (90243196)
矢口 宏 京都大学, 大学院・理学研究科, 助手 (30314173)
中辻 知 京都大学, 大学院理学研究科, 講師 (70362431)
山田 耕作 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (90013515)
|
Keywords | スピン三重項超伝導 / ルテニウム酸化物 / Sr2RuO4 / コバルト酸化物 / 核磁気共鳴 / アンドレエフ効果 / 磁化 / 走査型顕微鏡 |
Research Abstract |
最終年度の今年度は、スピン三重項の超伝導状態の詳細の確定と特有の新現象の開拓を継続して進めた。そして研究の総括として5年間の成果を取りまとめると共に、今後の発展的課題についても明確にして、報告書にまとめた。 今年度の新たな成果として、Sr2RuO4のRuO2面に平行な磁場下で50mTという低磁場までスピン磁化率を測定し、以前の成果と合わせて、三重項スピンは低磁場領域で磁場方向に向きを変えることを示唆する結果を得た。これにより、クーパー対スピンの方向は格子と強く結合せず、磁場で制御可能という新知見を得た。また、面平行磁場下で精密磁化測定を行い、上部臨界磁場の約2/3の磁場で二つの超伝導相の間の転移を強く示唆する異常を発見した。これはスピン三重項2成分からなるカイラル超伝導状態で予想される転移と符合し、これまでの解釈を一層支持するものである。カイラル超伝導状態に伴う自発的軌道電流の存在を直接観測するために、走査型のナノスケールホール素子顕微鏡での局所磁場計測も行い、今後の研究に必要な結晶加工の条件などを明らかにした。 また、Sr2RuO4とメタ磁性金属Sr3Ru2O7との共晶の合成に成功し、一見Sr3Ru2O7に見える部分が実は低磁場ではバルク超伝導性を示すことを明らかにし、詳しい低温測定を進めた。Sr2RuO4とRu金属との共晶体では圧力下で超伝導体積分率が数十%にまで増大することと合わせ、共晶系での超伝導研究に新たな方向性を与えた。 昨年度に超伝導を発見した、銀のカゴメ格子を含む層状酸化物Ag5Pb206が、酸化物としては初めてとなる第I種超伝導体であることを明らかにした。また比熱や量子振動から、有効質量の軽いほぼ自由電子とみなせるフェルミ面を持つことを明らかにした。これにより、酸化物の中に単純な単一バンド金属電子状態を作り出した上で、それを超伝導化できることを示した。コバルト酸化物超伝導体についても核磁気共鳴を用いて、超伝導対称性がスピン三重項の可能性を示す結果を得た。
|
Research Products
(14 results)