2003 Fiscal Year Annual Research Report
半導体量子井戸におけるTHz音響フォノンを用いた電子波動関数の可視化とその応用
Project/Area Number |
13852006
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
WRIGHT O.B. 北海道大学, 大学院・工学研究科, 教授 (90281790)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
友田 基信 北海道大学, 大学院・工学研究科, 助手 (30344485)
松田 理 北海道大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (30239024)
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Keywords | 半導体量子井戸構造 / 電子波動関数 / ポンププローブ分光 / サブTHz音響フォノン / 電子格子相互作用 / 超高速現象 |
Research Abstract |
本研究は、半導体量子井戸中の電子波動関数の深さ方向への空間的形状を、電子と相互作用する音響フォノンを介して可視化することを目的としている。電子波動関数の可視化は、物理学的見地から興味深いことに加えて、不純物のドープや外部電場位印加による波動関数への影響を直接観測できることからデバイス開発などの工業的な応用も期待される。今年度は主として以下の研究を行った。 井戸幅層2〜10nm程度のGaAs/Al_<0.3>Ga_<0.7>As三重量子井戸構造をMOCVD法により作製した。2台の同期されたTi-サファイアモードロックレーザーによって発生されるフェムト〜ピコ秒の時間幅を持つ光パルスを用いて、ポンププローブ法による量子井戸試料中の超音波パルス発生伝搬に関する測定を行った。2台のレーザーからのレーザーパルスのタイミングジッタを補正する新しい方法を開発し、これを用いて測定を行うことにより、測定の精度が飛躍的に向上した。ポンプ光波長を変化させることによって生成フォノンパルス形状は明確な変化を示す。量子井戸中の波動関数形状を考慮した解析方法についても、いくつかの新しい改良を加え、実験とモデル計算結果の整合性が大幅に改善された。また低温実験のための実験技術の改良も行い、信号雑音比の高い測定が可能となった。 波動関数形状に関する更に精密な知見を得るためには、生成された音響フォノンパルスによる試料表面変位を光音響効果とは分離して測定する必要がある。これらを分離して測定するために、プローブ光を試料に斜め入射する方法を開発・改良した。既に構築した不均一な光学定数分布を含む多層膜試料における斜め入射光の反射率を解析する理論に基づき、新しい干渉系を考案した。この干渉系を用いることにより、光音響効果の影響を完全に排除して表面変異のみを直接検出できる。この技法は、本研究以外にも広範な応用が考えられる。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] O.Matsuda: "Laser picosecond acoustics in a two-layer structure with oblique probe light incidence"Ultrasonics. (in press). (2004)
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[Publications] H.Hirori: "Electron dynamics in chromium probed with 2Ofs optical pulses"Physical Review B. 68. 113102-1-113102-4 (2003)
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[Publications] T.Saito: "Picosecond acoustic phonon pulse generation in nickel and chromium"Physical Review B. 67. 205421-1-205421-7 (2003)
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[Publications] 松田 理: "ピコ秒フォノンパルスで見るGaAsエアギャップ構造中の超高速キャリアダイナミクスの観測"日本物理学会講演概要集第4分冊. 第58巻第1号. 679-679 (2003)
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[Publications] 笹嶋 崇司: "ピコ秒超音波によるGaAs中の光励起キャリア拡散ダイナミクスの観測"第39回応用物理学会北海道支部学術講演会講演予稿集. 30-30 (2004)