植物ウイルスのゲノム複製装置の分子解剖と無細胞ウイルス複製系の開発に関する研究

2003 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 13854004
• Research Institution: The University of Tokyo
• Principal Investigator: 日比 忠明 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (50261954)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 白子 幸男 東京大学, アジア生物資源環境研究センター, 教授 (90143023) ; 難波 成任 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 教授 (50189221)
• Keywords: 植物ウイルス / RNA複製 / DNA複製 / 宿主タンパク質 / TMV / SbCMV / AGSV / SBWMV

Research Abstract

1.タバコの翻訳仲長因子eEF1Aは、TMVゲノムRNAの3'非翻訳領域(UTR)とともにTMV RdRpにも直接結合し、さらに本タンパク質の発現抑制によってTMVの増殖が阻害されることから、eEF1AがTMVゲノム複製複合体の1構成成分であることが示された。
2.TMV RdRpのPドメインと結合するタバコのPHF15タンパク質はRdRpのヘテロダイマー形成を阻害し、さらに本タンパク質の発現抑制によってTMVの増殖が促進されることから、PHF15はTMV RNA複製の阻害因子であることが示された。
3.SbCMVのORF II産物はそのC端側に存在するロイシンジッパーで相互に自己結合しており、この結合がウイルスの病原性に必須であることが示された。
4.タバコにおける病徴の異なるPVXの3系統、PVX-OS(輪状斑)、PVX-BH(モザイク)およびPVX-BS(無病徴)についてキメラウイルスおよび変異導入による解析を行った結果、5'非翻訳領域内の1塩基が輪状斑とモザイクの病徴を決定していること、およびRdRpのC末端領域内の1アミノ酸が上記いずれの病徴に対しても病徴発現と病徴抑制(無病徴)を決定していることが明らかとなった。
5.ASGVのORF1に認められるvariable region内に終止コドンを導入した変異株を作製し、病原性の解析を行ったところ、region内の5'末端寄りに終止コドンを導入した変異株は感染性を示すものの病原性が低下し、3'寄りに終止コドンを導入した変異株は野生株に近い病原性を示した。このregionをsGFPとの融合タンパク質としてNicotiana rusticaの細胞で発現させたところ、膜系に局在することが確認された。
6.ムギ類萎縮ウイルスのp152/p211複製酵素遺伝子だけを持つ変異型RNA1をオオムギ葉肉プロトプラストに接種したところ、RNA1蓄積量は接種9時間後に最大値に達したが、p152/p211は接種24時間後まで増加し続けた。次に、ウイルスRNA複製複合体の細胞内局在を明らかにするために、接種12時間後のプロトプラストから細胞小器官を分離した結果、p152/p211の大半は核・葉緑体の膜画分から検出され、一部は細胞質膜画分からも検出された。両画分ともp152はp211に対して約5〜10倍蓄積していた。

Research Products

• [Publications] Suzuki, M., Hibi, T., Masuta, C.: "RNA recombination between cucumoviruses : possible role of predicted stem-loop structures and an internal subgenomic promoter-like motif."Virology. 306. 77-86 (2003)
• [Publications] Suzuki, M., Yoshida, M., Yoshinuma, T., Hibi, T.: "Interaction of replicase components between Cucumber mosaic virus and Peanut stunt virusv"Journal of General Virology. 84. 1931-1939 (2003)
• [Publications] Shimizu, T., Yamaji, Y., Hamada, K., Sakurai, K., Watanabe, T., Hibi, T.: "Interaction between the helicase domain of Tobacco mosaic virus replicase and a tobacco arginine decarboxylase."Journal of General Plant Pathology. (in press). (2004)
• [Publications] Takemoto, Y, Hibi, T.: "Self-interaction of ORF II protein through the leucine zipper is essential for Soybean mottle virus infectivity."Archives of Virology. (in press). (2004)
• [Publications] Hirata, H., Lu, X., Yamaji Y., Ugaki M., Namba S.: "A single silent substitution in the Apple stem grooving virus genome causes symptom attenuation."Journal of General Virology. 84. 2579-2583 (2003)
• [Publications] Ohsato, S., Miyanishi, M., Shirako, Y.: "The optimal temperature for RNA replication in cells infected by Soil-borne wheat mosaic virus is 17℃."Journal of General Virology. 84. 995-1000 (2003)