2003 Fiscal Year Annual Research Report
シナプスにおける逆行性伝達物質としての内因性カンナビノイドの作用機構と生理的意義
Project/Area Number |
13854028
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
狩野 方伸 金沢大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (40185963)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田端 俊英 金沢大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (80303270)
少作 隆子 金沢大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (60179025)
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Keywords | 逆行性シグナル / カンナビノイド / シナプス伝達調節 / 小脳 / 海馬 / 大脳基底核 / カルシウム / 代謝型グルタミン酸受容体 |
Research Abstract |
本研究では、内因性カンナビノイドのシナプス伝達における役割を詳細に調べ、逆行性伝達物質としての作用機構と生理的役割の解明をめざしている。海馬、小脳、大脳基底核において、シナプス後細胞の脱分極による細胞内カルシウム濃度上昇またはグループI代謝型グルタミン酸受容体(I-mGluR)の活性化によって内因性カンナビノイドが放出され、逆行性にシナプス前終末のカンナビノイド受容体に作用して伝達物質放出の減少がおこることが、これまでの研究によって明らかになった。また、海馬においてはI-mGluRまたはムスカリニックアセチルコリン受容体の活性化が、(1)単独で内因性カンナビノイドの合成・放出を引き起こすだけでなく、(2)脱分極による内因性カンナビノイドの合成・放出を著明に促進すること、を明らかにした。本年度はこれらをさらに発展させ、以下の研究成果を得た。 1.大脳基底核線条体の中型有棘細胞では、内因性カンナビノイドによる逆行性の伝達物質放出抑制は、GABA作動性の抑制性シナプスにおいて著明であった。この効果は、ムスカリニック受容体の活性化によって著明に増強した。 2.海馬において、内因性カンナビノイドの合成・放出に関連するムスカリニック受容体はM_1とM_3の両方であることを、ノックアウトマウスを用いて明らかにした。 3.培養海馬細胞において、3種類の内因性カンナビノイド候補物質のGABA放出抑制効果を調べたところ、2-アラキドノイルグリセロール(2AG)が最も強い効果を示した。 4.小脳プルキンエ細胞においても、海馬と同様に、I-mGluRの活性化は、脱分極による逆行性の興奮性伝達物質放出抑制を著明に促進した。また、生化学的定量実験から、I-mGluRの活性化は脱分極による2AGの放出量を著明に増大した。したがって、この現象を仲介する内因性カンナビノイドは2AGであると考えられた。
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Research Products
(12 results)
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[Publications] Fukudome, Y.: "Insulin-like growth factor-I as a promoting factor for cerebellar Purkinje cell development"Eur.J.Neurosci.. 17. 2006-2016 (2003)
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[Publications] Hashimoto, K.: "Functional differentiation of multiple climbing fiber inputs during synapse elimination in the developing cerebellum"Neuron. 38. 785-796 (2003)
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[Publications] Ohno-Shosaku, T.: "Postsynaptic M_1 and M_3 receptors are responsible for the muscarinic enhancement of retrograde endocannabinoid signaling in the hippocampus"Eur.J.Neurosci.. 18. 109-116 (2003)
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[Publications] Takeda, Y.: "Impaired motor coordination in mice lacking neural recognition molecule NB-3 of the contactin/F3 subgroup"J.Neurobiol.. 56. 252-265 (2003)
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[Publications] Kitao, Y.: "ORP150/HSP12A regulates Purkinje cell survival : A role for ER stress in cerebellar development"J.Neurosci.. 24. 1486-1496 (2004)
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[Publications] Miyazaki, T.: "P/Q-type Ca^<2+> channel α1A regulates synaptic competition on developing cerebellar Purkinje cells"J.Neurosci.. 24. 1734-1743 (2004)
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[Publications] Kano, M.: "Retrograde modulation of synaptic transmission mediated by endogenous cannabinoids"Curr.Neuropharmacol.. 2. 49-57 (2004)
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[Publications] Kano, M.: "Endocannabinoid-mediated modulation of excitatory and inhibitory synaptic transmission. In : EXCITATORY-INHIBITORY BALANCE"T.K.Hensch and M.Fagiolini, (eds), Kluwer Academic / Pllenum Publishers, New York/Boston/Dordrecht/London/Moscow. 11 (2003)
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[Publications] 橋本浩一: "小脳シナプスの機能発達、可塑性および機能調節におけるグルタミン酸シグナル伝達の役割.(脳血管障害による「神経細胞死」の予防と治療)"川合述史/編 クバプロ. 16 (2003)
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[Publications] 狩野方伸: "内因性カンナビノイドによる逆行性シナプス伝達 学術月報"日本学術振興会. 5 (2003)
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[Publications] 橋本浩一: "発達期小脳における登上線維シナプスの機能分化 実験医学"御子柴克彦、真鍋俊也、三浦正幸/編 羊土社. 6 (2003)
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[Publications] 橋本浩一: "発達期小脳におけるシナプスの機能分化. 蛋白質 核酸 酵素 49No.3(増刊号/神経回路の機能発現のメカニズム)"大森治紀、渋木克栄、野田亮、山森哲雄/編 共立出版. 7 (2004)