2001 Fiscal Year Annual Research Report
聴源性驚愕反応を利用した幼児期ストレス体験の影響に関する比較心理学的研究
Project/Area Number |
13871013
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Research Category |
Grant-in-Aid for Exploratory Research
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
廣中 直行 専修大学, 文学部, 教授 (60173291)
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Keywords | 驚愕反応 / PTSD / 母子分離 / 筋電図 / 恐怖 / パーソナリティ |
Research Abstract |
発達途上で精神的外傷を経験すると様々な精神障害を起こしやすくなると言われる。本研究はその発症機構の解明を目的として、情動性を敏感に反映し、ほとんどの哺乳類で神経回路が共通している聴源性驚愕反応を指標とし、マウスとヒトを用いて幼若期のストレス体験が成長後の情動性に与える影響を調べた。 マウスの実験では、仔獣を7匹哺育中の雌性C57/B6マウス4腹を用い、うち2腹の仔獣は16日齢から28日齢で離乳するまで、休日を除く毎日夜間母親から離した。残り2腹は対照とした。この操作により母子分離を経験した仔獣の体重がやや低下した。30日齢で照明条件および暗黒条件の両者で大きな音(110dB)に対する驚愕反応を計測した。また37日齢で探索行動を観察した。その結果、暗黒条件における驚愕反応には母子分離群と対照群で差はなかったが、夜行性動物に恐怖を誘発するとされる照明条件では母子分離群の方がやや驚愕反応が大きかった。両者の探索行動には差がなかった。 ヒトの実験では、ヘッドフォンから大きな音(110dB)を提示し、眼輪筋の筋電図を記録する装置を設計、制作し、驚愕反応の基礎データを収集した。その結果、音の提示開始から30msec〜40msecの潜時で安定して驚愕反応が記録できた。次いで学生および大学院生8名の被験者を用いて予備実験を行ったところ、驚愕反応の大きさと音の反復提示に伴う反応の減弱(いわゆる慣れの現象)には大きな個人差のあることが明らかになった。 以上、今年度の研究では、実験システムを立ち上げる目的はマウス・ヒトともに達成することができた。しかしながらマウスの実験では実験的な幼若期ストレスの与え方として今年度の方法が良いかどうか検討の余地があり、ヒトの実験では驚愕反応の個人差が何に由来するものかは未だ明らかではない。引き続いて来年度の研究においてこの点を解明してゆく予定である。
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