2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13871038
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
越水 雄二 熊本大学, 教育学部, 助教授 (40293849)
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Keywords | フランス / 近代教育 / 教育システム / 公教育制度 / フランス革命 / アンシァン・レジーム / 啓蒙思想 / 国際情報交換 |
Research Abstract |
「フランス近代教育システムの基盤形成」をテーマに、本年度は次の2点を中心課題として研究を進めてきた。 1.18世紀のフランスで教育改革に関与した人物のテクストから、現状認識と改革構想を読み取り考察する。 2.現代の研究によるデータに基づき、18世紀フランスにおける学校教育の実態面での変容を描き出す。 本年度の研究成果と次年度への課題は、たとえて言えば、「近代教育システム」のハードウェア(学校制度)とソフトウェア(教育内容・方法)という二つの視角から、以下の通り要約・整理される。 (1)学校制度(公教育)構想:学校教育を国民統合の手段とする構想は、フランス革命議会での公教育論議を嚆矢とするものではない。本研究は、そうした構想げ1760年代以降体制派・反体制派を問わず知的エリート層において醸成され、革命前の段階で既に広く共有されていた史実を明らかにしつつある。今後の課題は、新たな学校制度(公教育)構想が、絶対に進行した教育改革の中でいかに深化、かつ具体化していたのかを詳しく実証する作業と、革命の前後でいかなる質的変化がみられたかという視点からの分析である。 (2)教育内容・方法の革新:アンシアン・レジーム期の教育の象徴として、従来の研究では、啓蒙思想家たちが中等教育カリキュラムの守旧的性格に浴びせた批判が広く知られてきた。しかしながら本研究は史料から、18世紀後半の開明的な学校教師たちが教育内容および指導方法を改良する試みを徐々に蓄積していた側面も読み取っている。そして、その側面の理論的基盤は、1720年代末にシャルル・ロランが公刊した『学習論』であったと考えられる。中世・ルネサンス期以来の学校教育の伝統が時代の変化に呼応しながら近代教育システムに継承されていく過程を、本研究のオリジナルな着眼点として今後さらに解明し考察を加えていきたい。
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