2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13871061
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Research Category |
Grant-in-Aid for Exploratory Research
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
千種 眞一 東北大学, 大学院・文学研究科, 教授 (30125611)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片岡 朋子 東北大学, 早稲田大学メディアネットセンター, 特別研究員 (80137075)
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Keywords | 認知文学論 / 文字コード / 1文字の定義 / 文字素 / 結合規則 |
Research Abstract |
現代言語学における文字言語の研究は、音声言語に比べると研究量・研究手法・体系づけのすべてにおいて不十分であると言わざるを得ない。「認知文字論」ともいうべき分野の確立をめざす本研究では、まず「1文字」という単位を定義することが不可欠となる。文字の古典的分類法では「表意文字」と「表音文字」に二分、さらに後者を「音素文字」と「音節文字」に二分するのが一般的だがこれは誤りである。表意文字は狭義における「アイコン」以外に「読み」をもつ。従って、文字を結合文字(結合音節文字[eg. タイ文字、デーバナーガリ文字])と非結合文字(音素文字[eg. ラテン文字、キリル文字]・純音節文字[eg. ひらがな、カタカナ]・表意文字[eg. 漢字])に分類するのがより正当であること、また、この分類をふまえて「1文字」は「記号例」+「結合規則」から定義されることがわかった。ここで記号(列)は1文字の構成要素(正しく設計された文字コードにおける1コードポイント)(例)であり、非結合文字を結合文字の下位類としているのは、非結合文字における1文字を「記号列」+「ゼロの結合規則」と定義できるからである。即ち、音声言語における「音素」に相当する概念を得られたことになり、これを「文字素」と呼ぶことが可能となった。興味深いことに、言語社会においては同一の文字体系を用いて異なる言語を表記(eg. ヒンディー語とサンスクリット)したり、同一言語を異文字表記(eg. 日本語における2種の「仮名」の使い分け、ラテン文字の使用)したり、あるいは表記方向によって話者の国籍(人種)を特定する(eg. コミックなどでカタカナ横書き部が特に欧米人のセリフ表記に用いられる)などの現象が見られる。こうした文字言語使用について、ここで定義した「文字素」を体系化することにより、一般的説明を与えることが来年度以降の課題となる。
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